鹿児島・十島村長、14日にも帰島判断 避難長期化の可能性も

2025/07/10 20:58 

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 強い地震が続いている鹿児島県十島村の久保源一郎村長は10日記者会見し、悪石(あくせき)島や小宝(こだから)島から鹿児島市内に避難している住民の帰島の可否について14日にも判断すると明らかにした。ただ、村内で震度4以上の地震が5日以上発生しないことが条件で、状況次第では避難が長期化する可能性もある。第1陣の避難から11日で1週間。長引く地震と避難に疲弊する住民からは早期の帰島を望む声も上がる。

 6月21日以降、連日地震が発生している悪石島では、3日の震度6弱の地震を受け、4日から3回にわたり島民の約7割に当たる計49人が村営フェリーで鹿児島市内に避難。2日に震度5弱を観測した小宝島からも15人が避難し、市内のホテルなどに滞在している。

 村が当初見込んでいた避難期間は1週間程度だったが、地震活動に収束の兆しが見えないため帰島は時期尚早と判断。しかし、避難した住民からは「島が心配だ」「日常の暮らしに戻りたい」といった声が寄せられていた。久保村長は「先の見通しがないよりも、ある程度のめどがあった方が住民も明るい展望を期待できる」と話した。

 村は希望者を募り、早ければ16日にも村営フェリーで帰島してもらうことを想定している。一方、避難延長を希望する住民には当面の間、宿泊先の確保や健康チェックを実施する方針だ。

 ◇長引く地震で島民に疲労

 悪石島から避難してきた漁師の有川和則さん(73)は元々島に残るつもりだったが、長引く地震に疲れがたまり、妻に続いて自身の体調も悪化。島には医師が常駐しておらず「このままでは島民に迷惑をかける」と避難を決め、6日に鹿児島市に渡ったという。

 有川さんは「病院にも行けたし、ようやくゆっくり眠れた」と話すが、気になるのはやはり島のこと。「船は置いてきたし、落石が道路でそのままになっていると聞く。早く戻って復旧の力になりたい」と話す。

 子どもたちにも影響が出ている。悪石島内にある唯一の学校である村立悪石島学園は、震度6弱の地震を受け、4、7日を臨時休校とした。児童生徒全14人は島外に避難し、8日以降はオンラインで授業を再開した。当房(とうぼう)芳朗校長によると、子どもたちは元気な様子だが、時折疲れた表情も見せるという。

 悪石島学園は10日に校外学習を実施。鹿児島市内の博物館やプラネタリウムを見学して気分転換を図ったほか、カウンセラーが子どもたちに対応できる態勢を整えているという。当房校長は「オンラインでは、子どもたちの様子や授業の理解度などくみ取りにくい部分もある。早く日常が戻ってほしい」と願う。

 ◇医師「具体的な支援策で不安軽減に」

 揺れや避難が長引けば、島民の不安やストレスも大きくなる。悪石島で20年以上、巡回診療を続ける鹿児島赤十字病院(鹿児島市)の副院長、永井慎昌医師(64)は「自然災害から来るストレスは終わりが見えないため影響が大きい」と指摘する。

 永井医師が悪石島で診療中だった6月24日にも震度4の地震が起きた。すでに睡眠不足を訴える島民がおり、ストレスを抱えていたという。不眠やストレスは精神的な不調につながり、抑うつ状態になったり、持病に悪影響を及ぼしたりする恐れがある。

 永井医師は「たわいない会話をしたり、軽く体を動かしたりすることでストレスが解消される」とした上で、経済的な不安を抱える人もいるとして「行政などが具体的な支援策を示すことで今後の生活の不安の軽減につながるだろう」と話す。

 トカラ列島近海で6月21日以降、10日午後5時までに観測した震度1以上の地震は1762回に上る。近海では2023年9月に346回、21年12月に308回の地震が発生したが、今回はこれを大きく上回っている。【取違剛、田崎春菜、平川昌範】

毎日新聞

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