富士登山、静岡側で新たな試み始まる 電波状況や周知に課題も

2025/07/10 21:57 

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 富士山の静岡県側の登山道が10日、山開きを迎えて開通した。無謀な登山が問題になる中、昨年の山梨県側に続き、静岡側でも規制を始めた。スマートフォンアプリを使った登録制となり、入山料4000円の支払いと登山ルールの学習が義務付けられた。大半の登山客が準備を済ませた状態で臨んでいたが、規制を知らなかった人や電波状況に焦る人もいた。

 静岡県は5月、富士登山条例を施行して学習制度などを導入。午後2時~翌午前3時は山小屋宿泊者を除き入山できなくした。登山希望者はなるべく事前に専用アプリで個人情報の登録や学習、入山料の支払いなどを済ませる。登山口で確認される入山証もアプリでQRコードとして発行される。

 静岡側にある3本の登山道のうち富士宮ルートでは10日、標高約2400メートルの5合目にある登山口に、入山証を持っている人向けと、事前に準備していなかった人向けの受付がそれぞれ設置された。

 東京都の20代女性は移動中に登録が必要と知り、急いで手続きした。現地で現金も使えるが、「キャッシュレス決済できたので助かった」と話した。

 別の登山客は電波受信状況が悪く、しばらくアプリが稼働せず、QRコードも表示されなかった。最終的につながったが「30分ほどタイムロス。日帰りなので行程が狂った」と心配そうに山に向かった。

 朝からの山行で登頂した静岡県藤枝市の男性(83)は、自分なりの番付を作るほどの山好き。「東の横綱」に据えた富士山には90回近く登った。「入山料4000円にはびっくりだ。規制の必要性も分からなくはない。でも山が面白くなくなっちまう」と悔しがった。

 規制を知らなかった登山客もいた。

 富士山9回目という都内の男性は、バスで登山口に到着してから手続きが必要だと知った。同行客は申し込み済みで、一人だけ県が設けた「事前学習小屋」で登山ルールなどを説明する動画を視聴。入山前の合格が必要な富士山テストを受けたり入山届を書いたりした。「いざ登ろうというときにいろいろ書類を書くことになり、苦痛だった」と話した。

 ただ、ほとんどの登山者は事前に手続きしており、QRコードを提示してスムーズに登っていた。デンマークから来た女性は「海外にも入山料がかかる山はある。環境保全につながるなら、払う意義はある」と前向きだった。

 開山期間は9月10日まで。静岡側は昨夏まで、任意の協力金1000円のみ求めていた。【藤渕志保】

毎日新聞

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