太平洋プレート沿って「地震のカーテン」 染み出た水、岩盤に影響か

2025/07/11 04:00 

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 北海道から関東にかけて太平洋プレートが沈み込む一帯(深さ約35~75キロ)に沿って、カーテンのように鉛直方向に延びる地震の「巣」があることをAI(人工知能)を用いたビッグデータ解析で発見したと、東北大と東京大の研究チームが10日付の米科学誌サイエンスに発表した。プレートから染み出した水がこの「カーテン」内を上昇し、巨大地震を引き起こす岩盤破壊の拡大や抑制に関わっている可能性があるという。

 日本列島の地下では、太平洋プレートが陸側プレートの下に沈み込んでいる。チームは、東日本大震災後に太平洋側に設置された地震津波観測網が2016~20年にとらえた地震データから、約59万地点の震源情報をカタログ化した。

 その結果、プレートの沈み込み帯に沿って鉛直方向に、震源が集中するエリアを発見したという。チームはこのエリアを「前弧地震帯」と命名。太平洋プレートの地下深くの高温高圧の環境で岩石から水が染み出し、地表に向けて上昇することでこの地震帯が作られていると考えられるという。

 水は、深い場所ではプレートをゆっくり滑らせる「スロースリップ」を起こし、プレート境界面が激しく滑ることで起きる巨大地震を抑制している可能性がある。一方、浅い場所では断層を滑りやすくするため直下型地震を活発化させる働きがあり、首都直下地震を誘発する恐れがあるという。

 チームの内田直希・東大教授は「どのプレート境界にも同じような構造の地震帯がある可能性がある。将来発生する地震の姿を予測する上で重要な手がかりになる」と話している。【高橋由衣】

毎日新聞

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