15年ぶりの「遠地津波」は22都道府県に到達 避難巡り死亡事故も

2025/07/30 21:27 

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 30日午前8時25分ごろ、ロシアのカムチャツカ半島付近を震源とするマグニチュード(M)8・7(推定)の地震があり、気象庁は太平洋側を中心に津波警報と津波注意報を発表した。岩手県の久慈港で最大1・3メートルを観測するなど、同日夜までに北海道から沖縄県にかけて22都道府県に津波が到達した。

 気象庁は北海道から和歌山県までの太平洋側の地域に津波警報を出した。警報は、30日午後8時45分までに全て解除された。注意報は北海道から沖縄県の広い範囲で継続している。

 総務省消防庁によると、警戒レベルが5段階で最高の「緊急安全確保」と、2番目に高い「避難指示」の対象者は最大で21都道県の200万人以上に及んだ。

 三重県熊野市では軽乗用車が道路脇の崖下に転落し、運転していた同市の女性(58)が死亡した。女性は家族に「警報を受けて車を移動させる」と連絡していたという。北海道白老町や宮崎市では、60代の女性が避難中に軽傷を負った。

 津波は30日午前10時半ごろから各地の沿岸部で観測され始めた。観測された津波の高さは、岩手県久慈市の久慈港で午後1時52分に1・3メートル。東京都の八丈島や北海道根室市で80センチ、宮城県石巻市や福島県相馬市で70センチ、北海道浜中町や茨城県大洗町で60センチなど。第1波以降に、より高い津波が各地で観測された。

 気象庁によると、今回の震源は北海道根室市から北東に約1500キロ離れた地点。当初、地震の規模を示すMは8・0と推定し、午前8時37分に広い範囲に津波注意報を出したが、その後の解析でM8・7と判明し、同9時40分に警報に引き上げた。この地震で、北海道釧路市などで震度2を観測した。

 国内で津波警報が発表されるのは、2024年4月に台湾東部沖を震源とする地震で沖縄本島と宮古島・八重山地方に出されて以来。海外の遠地で起きた地震による警報は10年2月のチリ地震以来、15年ぶり。

 気象庁は30日午後の記者会見で「少なくとも1日程度は津波の高い状態が継続する見込み。津波が満潮と重なると潮位が現在より上昇する可能性がある」と注意を呼びかけた。

 津波警報を受け、鉄道各社は沿岸部の路線を中心に運転を見合わせた。仙台空港では滑走路が閉鎖され、航空各社の定期便が欠航となった。【最上和喜、宮城裕也、菅沼舞】

毎日新聞

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