雷キャッチして利用も夢じゃない!? 「空飛ぶ避雷針」実験に成功

2025/08/02 15:00 

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 夏の夕立にはつきものの雷。落雷場所によっては電子機器や風力発電施設が故障したり、スポーツやイベント会場で人身事故につながったりする厄介者だ。国内の被害額は毎年2000億円とも推定される。雷エネルギーは巨大で、平均的な雷放電1回当たりのエネルギーは約400キロワット時と、一般家庭の電気使用量約1カ月分に相当するという。ビリビリと空を走る稲妻を、つかまえて利用できたらいいのに――。そんな空想を現実にする研究が進んでいる。

 取り組むのは、通信設備の落雷対策に取り組んできたNTTの宇宙環境エネルギー研究所。昨年12月、ドローンを「空飛ぶ避雷針」として自然の雷を誘発・誘導する実験に、世界で初めて成功した。

 実験チームは、ドローンの機体をアルミ製のかごとアンテナで囲い、かごの下に垂らしたワイヤで地上に電流を流す仕組みを考案。雷が直撃した際の電流をかごに迂回(うかい)させることなどで、ドローン本体を守ることができる。雷雲の中にドローンを飛行させてワイヤのスイッチで電気的につなぐと、ドローン周辺の電気的な状態が急激に変化し、雷が誘発されるという仕組みだ。

 島根県浜田市の山間部で行った実験では、雷1発を誘発することに成功した。数百アンペアの電流が流れたと推定され、ドローンを覆うアンテナ5本のうち1本の先端が溶断したものの、雷を受けた後も安定して飛行を続けることができた。この雷に耐える仕組みは、平均的な自然雷の5倍に当たる150キロアンペアの人工雷にも耐えることができた。

 キャッチした雷を、どう蓄えるか。超高電圧・電流の雷エネルギーは、現在の技術では直接充電できないという。

 今後のアイデアの一つは、金属タンクに巻いたコイルに雷の電流を流して、発生した電磁力でタンク内の空気を圧縮、その気圧でタービンを回して発電する方法だ。フライホイールという装置で回転エネルギーに換える案もある。いずれも瞬間的な電気エネルギーを、運動エネルギーなどに変換して蓄積することを目指している。

 チームのリーダーを務める長尾篤主任研究員は「屋外イベントや風力発電施設などを守るときには、雷雲の状況を見極めて受け止め、充電目的の時にはたくさん雷を誘発することも考えられる。将来的には大型トラック程度の充電車を携え、雷から重要施設や社会を守ることができたら」と展望する。【三股智子】

毎日新聞

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