宇都宮LRT「延伸計画」に新たな試練 利用者は1000万人超えに
次世代型路面電車(LRT)の運行会社「宇都宮ライトレール」は20日、利用者が19日に1000万人を超えたと発表した。開業から2年足らず。通勤・通学の足として定着し、想定より6カ月早い到達となった。
宇都宮市は駅西側の延伸に向けて、10月に国に計画の特許申請を行う予定だ。だが、用地補償の対象が想定よりも多いことなど、延伸実現の新たなハードルも判明。2030年としていた西側の開業予定は大幅に遅れる可能性が出てきた。
JR宇都宮駅東口を起点に宇都宮市―芳賀町間14・6キロを結ぶLRTは、23年8月26日に開業。国内での路面電車新設は75年ぶりだった。
車両は「雷都」をイメージした黄色と黒の洗練されたデザインで、ベビーカーや車イスでも乗車可能な低床バリアフリー構造。必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかない、優れた鉄道車両に贈られる「ローレル賞」など多くの賞を受賞した。国内外からの視察も絶えず、沿線の工業団地などへの投資額は1100億円を超える。
利用者が500万人を達成したのは開業から1年を過ぎた24年9月12日。24年度は通年での黒字を達成した。その後も順調に利用者が増え、今年7月は約50万6000人と、1カ月としての過去最高を記録した。
ただし、利用者の増加に伴い、朝夕の通勤・通学時間帯は混雑が発生している。沿線に交通結節点として4カ所のトランジットセンターが設けられたが、バスの乗り継ぎなど2次交通の整備が課題となっている。
西側への延伸は、宇都宮駅をはさんだ東西交通の分断を解消する基幹交通として当初から計画されてきた。西側は古くから商業の中心地としてにぎわってきたが、郊外型店舗の増加により空洞化が進んでいる。駅東口を起点に県の教育会館までの大通り4・9キロを結ぶ計画だ。
だが、LRTの軌道整備に伴い、大通りは片側3車線から1車線になる。路線バスは現在、大通りを1日約2300台走行しており、桜通り十文字付近を起終点にすることで走行台数を3割減らす想定だが、周辺の事業者をはじめ市民生活への影響は避けられず、沿線以外の住民の不安も大きい。
また、駅の東西を結ぶための工事にも課題がある。計画では、起点となる駅東口停留場から北に向けて軌道を高架化し、曲線を描いてJR在来線と3階部分に相当する新幹線の高架の間を抜け、改修した西口のペデストリアンデッキに駅西口停留場を新設するとしている。広島電鉄では今月、JR広島駅ビル2階部分に路面電車が乗り入れたが、在来線と新幹線の間を抜けてLRTを通す工事は初めてとなる。
JR宇都宮駅の横断に関しては、18年に駅北側を通るルートが決定した当時から、LRTの高架下を走ることになる在来線の安全性など課題が指摘されてきた。このほど示された市の軌道計画によると、高架橋の勾配は延伸区間最大の60パーミル。横断部付近の3カ所が最小曲線半径30メートルで、LRTの運行の安全性にも最大の配慮が求められる。
資材労務費の高騰などで事業費も膨れ上がっている。22年時点では概算で約400億円とされていたが、今年5月には1・8倍の約700億円との見通しが示された。資材費などだけではなく、西側の教育会館付近に5~6編成程度の車両が留置できる施設を整備したり、需要予測に応じて車両数を増やしたりすることが影響しているという。
そうした中、計画の前提を揺るがす新たな事実が今月1日に公表された。
地中のインフラ埋設物(幹線管路の電線共同溝)が東側より7倍も多く、移設に時間がかかることに加え、道路幅や拡幅範囲が確定したことに伴い、見込みより多くの用地補償が必要となったのだ。市は30年の運行開始を断念する方針を明らかにした。
移転などを伴う用地補償は計80棟にも及び、うち4階以上のマンションは10棟程度。24年までは現状の道路上での整備を目指してきたが、今年5月に概算事業費に用地補償が必要となる住戸について一定程度見込むことにし、6月にその規模が確定したという。
24年の市長選で佐藤栄一市長は「30年開業」を公約して6選したが、開業の遅れは避けられない。市の担当者は「駅から(途中の)裁判所までは新たな用地補償は必要ない」として、認可を受けられれば工事は始められるとの見方を示すが、用地補償にかかる年月は容易に見込めるものではない。
市議会からも厳しい声が上がっている。「埋設物や用地の問題は以前からわかっていたのではないか」「事業費がさらに増えるのではないか」など、市の対応を批判。LRT整備に賛成の議員からも「費用対効果を見極めた上で事業の是非を判断すべきだ」という声が出始めている。
30年の運行開始を前提に、沿線で事業を進めてきた関係者もいる。先行きの不透明さは、利用者1000万人達成の勢いをそぎかねない。【松沢真美、有田浩子】
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