光秀しのぶ場、整える 大津・坂本城址公園で歴史ファンがキキョウ栽培

2025/09/29 06:15 

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 大津市下阪本3の坂本城址公園で、戦国武将、明智光秀の石像前にキキョウ(桔梗)を植えた盆栽鉢がある。支局の同僚に教えられて訪れた時は、旬を過ぎていたため1輪しか開いていなかったが、キキョウは光秀の家紋。小粋なセンスに感銘して世話人を探したところ、昨年の「地元の大ニュース」がきっかけで始めたという方に出会えた。【岸桂子】

 15年ほど前から下阪本で暮らす公務員、吉本幸樹さん(51)。歴史に興味があり、特に戦国時代と幕末の坂本龍馬好き。当地に転居後は光秀にひかれ、集めている御朱印・御城印は光秀ゆかりの社寺・城だけ別に整理している。「どこもキキョウゆかりの印があり、実際に植えられています。でも地元では咲いていない。寂しいな、なんとかできないかな、と思っていました」

 2024年2月。光秀が築いた坂本城の「三の丸」とみられる大規模な石垣と堀の跡が下阪本3で発見され、延べ2000人が押しかけた現地説明会に吉本さんも参加。その後足を伸ばした城址公園で、ボランティアガイドをしている「坂本城を考える会」に出会い、勧誘された。「花植えを提案できるかも」と入会した。

 同年春。自宅でキキョウの種をまき、育て始めた。順調に咲き始めたものの「会員は人生の先輩ばかり。入会間もない若造が発言するのは……」と次に踏み出せずにいたが、8月に好機が訪れた。同公園の花壇でパンジーが旬を終えて空きスペースができたのを見て、思い切って懇親会で「植えてみたい」と提案した。「好きにやっていいよ、と言っていただけて、翌朝、すぐに植えました」。10日後、石碑の前に盆栽鉢を置いた。場にふさわしい花はすぐに好評を得た。

 吉本さんは週2~3回の朝5時ごろ、水やりのため公園を訪れる。さらにペットボトルと手芸用ひもを使った「自動水やり」の仕掛けをするなど手入れを怠らない。今年はサプライズも起こった。光秀像の横に、吉本さんが関与しないキキョウのプランターが増えたのだ。「誰かが共感してくれたと信じています」

 今はボランティアガイドにも参加している。「歴史ファンの多くは、それぞれに信じていることがあります。史実はわからないことが多い。だから僕は、ゆかりの花が咲いていることで場を整えられたらそれでいい、と思っているんです。『花の前で写真撮ってください』と言われるのが一番うれしい」

 18日、坂本城跡の国史跡指定が官報に告示された。「近世城郭のスタートラインである坂本城跡が指定されて本当によかった。城址公園は史跡の枠外ですが三の丸は埋め直されており光秀をしのぶ場所としては限られる。多くの方に来ていただければ」とほほ笑んだ。

 ◇坂本城を考える会

 「坂本城を考える会」は2007年に発足。坂本城に関心を持つ有志が集い、週末を中心に坂本城址公園でボランティアガイドを実施したり勉強会を開いたりしている。河村益孝会長(84)は「私的なグループですが、トイレの改善を行政に働きかけたほかお城巡りなどもしています。国史跡に指定され坂本城跡に注目が集まる今、ぜひ参加してほしい」と呼び掛けている。問い合わせは同会のメール(sakamoto−jyoh−kanri@sakamoto−jyoh.org)。

毎日新聞

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