「本来の自分で生きられる」 外観要件なしで性別変更の2人 札幌

2025/09/30 16:30 

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 戸籍上の性別を変更するよう求めた家事審判で、札幌家裁が特例法に定められた変更のための外観要件を「違憲」と判断し、認められた性同一性障害の当事者2人が30日、札幌市内で記者会見した。

 2人は札幌市内在住のAさんと司さん(いずれも自称)。2024~25年に性別変更を家裁に申し立て、9月19日付でAさんは男性から女性へ、司さんは女性から男性への変更を認める決定を受けた。

 性同一性障害特例法では、性別変更に際し、変更後の性別の性器に似た外観を備えていることを求める規定があり、家裁はこれを「違憲で無効」と判断。今回は外科手術だけでなくホルモン療法についても不要とした。

 2人は既往歴などからホルモン療法が継続できない事情がある。Aさんは「痛い思いをしなくても本来の自分で生きられる。今回の決定が同じような(外観要件なしで性別変更を求める)人の役に立てば。普通に健康に生きたい」と話した。司さんは審判の内容を知った時を「現実感がなかった」と振り返った。

 代理人の皆川洋美弁護士は「外科手術だけではなくホルモン治療も不要であるとした点において画期的な決定だ」と評価した。

 性別変更に関し、最高裁は23年に生殖機能がないことを求める要件については憲法違反で無効とする決定を出したが外観要件は判断せず、審理を差し戻された広島高裁は24年に外観要件を「違憲の疑いがある」としていた。

 トランスジェンダーの研究をする倫理学者の高井ゆと里さんは「札幌家裁の判断は意義がある。性自認に従った扱いを受けるという重要な法的利益の尊重のために立法府が責任を持って法改正すべきだ」と指摘した。【谷口拓未】

毎日新聞

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