<袴田巌さん再審>「事件はまだ終わっていない」 無罪判決の課題争う 袴田巌さん提訴
1966年の一家4人殺害事件で強盗殺人などの罪で死刑判決を受け、昨年10月9日に再審無罪が確定した袴田巌さん(89)が、新たに国と静岡県に損害賠償を求めた訴訟。「事件はまだ終わっていない。どうして起きたのか何が原因か、わかっていない」。国賠弁護団で団長を務める小川秀世・主任弁護人は会見の冒頭で強調した。227ページに及ぶ訴状の8割以上は、警察・検察・裁判所が犯したと主張する違法行為の列挙に費やした。
無罪判決では踏み込まれなかった課題が残っているとして、原告側は「五つの違法性」を争う。それぞれ捜査、取り調べ、起訴、捏造(ねつぞう)、裁判所の違法だ。
原告側は、警察は事件直後から袴田さんを犯人とする筋立てで、証拠を捏造し「都合のよい事実をつくった」と主張する。訴状では犯行経路や被害者の遺体、凶器などの証拠に疑問を突きつけた。逮捕から起訴までの23日間で計430時間以上に及ぶ長時間の取り調べや、弁護士との接見を妨害した権利侵害も指摘する。小川弁護士は「真犯人に結び付く証拠を無視し、捜査もしなかった許しがたい事件。真実を隠し検証もできない。捜査の無法地帯が生んだ問題」と憤った。
起訴後に強制的な取り調べをし、捜査を指揮した検察の責任も問う。西沢美和子弁護士は「起訴時点で証拠がなく違法な取り調べをするしかなかった」と推察。証拠不十分な中での起訴の判断自体が誤りだったと追及する構えだ。
裁判所の責任を正面から問うのも異例だ。検察が犯行時の着衣と主張した「5点の衣類」は無罪判決で捏造と認定されたが、死刑判決を出す際に裁判所は捏造の可能性の認識できたのに検証しなかったと指摘。疑問を持たずに有罪認定した責任は重いと主張する。
論点が多い訴訟の長期化の懸念に対し、笹森学弁護士は「袴田さんが最短距離で賠償を得るなら、すでに再審無罪判決で認定された『5点の衣類』など三つの捏造の責任追及だけでいい」と認める。その上で再審無罪判決では「過去の裁判所の認定に沿って判断し、認められるべき違法が蹴られた」とし、「過去の認定も間違いないと言っているように聞こえた。怒りをもって総括させないといけない。全てを明るみに出して認定させたい」と話した。
国や県に求める損害賠償金は6億840万円。袴田さんの精神的苦痛を考えると「これでも足りない」(加藤英典弁護士)が、前例がない金額だ。内訳は逮捕(66年8月)から釈放(2014年3月)までの身体拘束期間中の慰謝料4億7466万円、介護費用など釈放後の慰謝料7843万円、そのほか弁護士費用などとした。拘束期間中の慰謝料から刑事補償法に基づく交付済みの刑事補償金2億1700万円は控除した。
死刑確定(1980年12月)から執行停止(2014年3月)まで死刑の恐怖にさらされ続けたことへの慰謝料を巡っては、「恐怖」の賠償額をどう算定するか弁護団内でも議論になったという。過去の事例を考慮すると刑事補償金(上限額1日当たり1万2500円)以下になるが、異常とも言える長期の拘束期間を考慮し、1カ月100万円で計算して最終的に3億9900万円を請求することにした。【藤渕志保】
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