平和享受する本土、かたや沖縄は 演劇「カタブイ」終章、11月上演
こちらは土砂降りの大雨なのにすぐ先は晴れている――。沖縄で「カタブイ(片降り)」と言われる気象になぞらえ、日本の安全保障の重い負担に苦しんできた沖縄と、平和を享受してきた本土という構図を、ある家族の物語を通して描く演劇「カタブイ、2025」が11~12月、沖縄と東京で上演される。沖縄が米国統治から日本に復帰した1972年を描いた第1部、米兵による少女暴行事件で沖縄県民が怒りに震えた95年を捉えた第2部に続く3部作の終章。2025年の沖縄はどう描かれるのか。
95年10月21日。宜野湾市の公園で、前月に起きた米兵による少女暴行事件に抗議する県民総決起大会が開催され、約8万5000人(主催者発表)が集まった。舞台制作会社「エーシーオー沖縄」(那覇市)の代表、下山久さん(78)も当時、大会に参加。怒りの拳を突き上げた。「沖縄の現状が全国に共有される。これから沖縄の状況は変わるかもしれない」と感じた。
下山さんは72年に東京から沖縄に生活拠点を移し、演劇プロデューサーとして、戦後の米国統治下での沖縄の人々の人権抑圧や、基地負担の理不尽さなどを問う作品を送り出してきた。作品は高い評価を受けたが、基地問題は一向に解決されず、「古い芝居がいつまでも通用してしまう」(下山さん)という現実に複雑な思いも抱いてきた。
そんな中、沖縄は22年、日本復帰から50年の節目を迎えた。エーシーオー沖縄は名取事務所(東京)との共同制作で、この年に「カタブイ、1972」を、24年には2作目となる「カタブイ、1995」を上演した。
2作目には95年10月の県民総決起大会も登場する。大会は保守、革新の政治的立場を問わず超党派で開かれ、米軍の綱紀粛正や、米軍関係者の特権を認める日米地位協定の早期見直し、基地の整理・縮小などを日米両政府に求めた。
「復帰闘争以来だよー、まさかまたこんな日が来るなんてねー」。劇の登場人物の一人は「沖縄がひとつになれた日」を素直に喜ぶ。
一方で、基地がもたらす恩恵が県民を分断していく状況も描く。米軍基地用地の使用契約を拒否する「反戦地主」と「拒否すれば不利益を被る」と恐れて契約に応じた地主が対立する。
11月上演の新作も含め3作とも舞台のセットはテーブルを置いた畳敷きの仏間だけ。普段は教師や建設業者として働く家族が、サトウキビの収穫時に集まる。その語り合いや心の機微を通して、基地の存在が一人一人の生活に影を落とす沖縄の現実が表現される。
泣き笑いに包まれる家庭劇にした狙いについて、下山さんは「『基地反対』と声高に叫ぶのではなく、観客が物語を自分の家族に投影し、『自分ごと』として考えられるようにしようと思った」と話す。
1作目の「カタブイ、1972」で、復帰運動に力を注いだ女性はつぶやく。「私は、日本に復帰すれば、本土と同じように、人権が保障されて、基地もなくなるはずだと思っていたの。(中略)でも、違った」
復帰から53年。総決起大会から30年。沖縄の過重な米軍基地負担は変わらないばかりか、軍事力を拡大する中国を念頭に県内各地で自衛隊の配備・増強まで進む。政治的な立場の違いによる分断はさらに深刻化し、家庭や地域で基地問題を話題にするのは避けられるようになった。
こうした社会情勢を背景に、3作目の「カタブイ、2025」は家族のその後を描く。下山さんは劇に込めた思いをこう語る。「沖縄は日本の縮図。どう考えても理不尽なことをそのままにする社会でいいのか。日本も問われている」
◇脚本・演出は内藤裕子さん
「カタブイ、2025」の脚本・演出は1、2作目に続き、演劇集団円の内藤裕子さん。沖縄公演は、那覇市のひめゆりピースホールで11月2~8日。問い合わせは、エーシーオー沖縄(098・943・1357)。東京公演は、東京都新宿区の紀伊国屋ホールで11月28日~12月7日。問い合わせは、名取事務所(03・3428・8355)。27年9月に東京で、翌10月に沖縄で3部作を再上演する。【比嘉洋】
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