クマ対策で陸上自衛隊が秋田県と協定締結 鹿角市で活動開始
陸上自衛隊第9師団(司令部・青森駐屯地)は5日、クマによる人身被害が深刻化している秋田県と「クマ被害防止のための活動の支援に係る協力協定」を結び、支援活動を開始した。
陸自は協定に基づき、クマ捕獲用の箱わなの運搬▽箱わなの設置・見回りに伴う猟友会メンバーなどの輸送▽駆除後のクマの運搬、埋めるための穴掘り▽ドローンなどを用いた情報収集――を担う。期間は11月末までとされ、松永康則第9師団長は秋田県庁で報道陣に「12月以降は、その時の状況を踏まえて調整することになる」との見通しを示した。
この日は、陸自秋田駐屯地に拠点を置く第21普通科連隊の15人が鹿角(かづの)市に出動。仕掛けてあった箱わな1個を約6キロ離れた場所に車両で運搬するのを支援した。地元猟友会のメンバーも同行した。
防衛省によると、自衛隊はクマを含めて鳥獣駆除を任務としておらず、今回は武器使用を伴う駆除は行わない。支援活動は猟友会との集団行動を基本とし、クマとの遭遇時は猟友会がまず対応する。
隊員は防弾チョッキや鉄帽を着用し、クマ撃退用スプレーを携行する。監視役の一部隊員は銃剣道用の木銃(もくじゅう)(長さ約1・6メートル)や防護盾、手動で網が飛び出す道具(ネットランチャー)も携行。いずれも武器には該当せず、クマと距離を取るために用いるという。
秋田県の鈴木健太知事は協定締結後、自衛隊に感謝したうえで「中心市街地での目撃情報が相次ぎ、人身被害もとどまるところがない。『もう手が回らない』という悲痛な声が届いている」と説明。今回の支援要請については「極めて例外的で、今後も自衛隊に鳥獣被害対応をお願いするつもりはない」と話した。
秋田県内では半数近い自治体から自衛隊の支援を求める声が上がっており、大館市や北秋田市、八峰町との間で具体的な調整が進められているという。2025年度のクマによる人身被害は11月4日現在で53件。過去最悪だった16年度に並ぶ4人が死亡し、重軽傷者も56人に上る。【高橋宗男、松浦吉剛】
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