クマに翻弄される教育現場 校庭に出没の小学校はどう対応した?

2025/11/07 07:15 

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 クマの出没や人身被害が全国的に相次ぐ中、福島県内でも小学校など人間の生活圏にクマが近付いている。現場は対応に追われ、専門家は「クマを遠ざけるためにできることはたくさんある」と対策の徹底を呼び掛けている。

 10月27日夕、福島市立佐原小(同市佐原、児童数14人)の校庭をクマ1頭が歩いているのを近隣住民が目撃。警察に通報したが、その後は日没でクマの姿は確認できなかった。そのため翌28日は児童を自宅待機させ、教職員は近くの市立西信中(同市上名倉)に出勤してオンライン授業をする緊急措置を取った。

 その後、クマの足跡が見つかり校庭を抜けて山の方に逃げたとみられると警察が確認したことから、29日に登校を再開した。だが30日未明に再びクマ2頭が校内の駐車場で目撃されたため、急きょ児童の登校を中止。教職員は安全を確認して校内に入り、オンライン授業に切り替えた。31日は校外学習で信夫山を訪れ、そのバスも西信中で乗降した。

 同日、佐原小近くの畑でわなにかかるなどしたクマ3頭が駆除された。それ以降目撃情報はなくなり、連休明けの11月4日から登校を再開。市教育委員会は、クマが校内に出入りする抜け道となっていたとみられる校庭のフェンスと道路の擁壁の隙間(すきま)を針金などでふさいだ。

 同小の吉田牧子校長は「コロナでタブレット端末を使ったオンライン授業に慣れていたのがよかった。この対応が正解かは分からないが、子どもたちの安全のためベストは尽くした」。市教委学校教育課の芳賀沼彰課長は「昨年までと異なり、学校近くでの出没が増えて現場も疲弊しているが、危機意識を高めて子どもの安全を守ってほしい」と話す。

 福島市では今年4~10月のツキノワグマの目撃件数が323件と例年の4倍以上に増え、特に10月は145件と突出していた。木幡浩市長は6日の定例記者会見で「もはや異常事態レベル。クマが人里に慣れてきてしまっている」と指摘。「クマの全体数を把握し、適正頭数との差(の分の個体)をハンターが駆除する適正管理を国や県でも進めてほしい」と求めた。

 県鳥獣対策専門官を務める望月翔太・福島大准教授(野生動物管理学)は「今年は従来からは考えられない危険な状態。人里に出てきたクマを駆除して人を恐れさせ、電気柵などで緩衝帯を設ける2本立ての対策が必要」と指摘。一方で住民側も「カキの実を放置しない、草刈りをするなどやれる備えはある」と話す。【錦織祐一】

毎日新聞

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