妊婦事故死 胎児への過失致傷罪、立件を断念へ 名古屋地検

2025/11/28 16:23 

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 愛知県一宮市で妊娠9カ月の女性(当時31歳)を乗用車ではね死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪で起訴された児野(ちごの)尚子被告(50)=公判中=に対し、名古屋地検は、事故後に生まれ重度の脳障害を負った女児を負傷させたとする同法の過失致傷罪の適用は見送る方針を固めた。関係者への取材で判明した。一方、起訴内容には事故が女児に与えた影響について盛り込む方向で、名古屋地裁一宮支部に訴因変更を求める。

 事故は5月21日午後、一宮市木曽川町の市道で発生。出産のため里帰り中で散歩をしていた研谷(とぎたに)沙也香さんが、後方から来た児野被告の車にはねられ、硬膜下血腫で2日後に亡くなった。当時、胎内にいた日七未(ひなみ)ちゃんは帝王切開で搬送の約1時間半後に生まれたが、酸素が届かない状態が続いたことで脳が損傷し、人工呼吸器が外せないなどの障害が残った。

 地検一宮支部は6月、児野被告を沙也香さんを死亡させたとする罪のみで起訴。起訴状には日七未ちゃんに関する記載はなかった。

 遺族は「子どもも被害者だ」と訴え、日七未ちゃんへの過失致傷罪も問うよう地検に要望。9月には11万筆以上のオンライン署名を地検に提出し、地検は日七未ちゃんと事故との因果関係などを補充捜査していた。

 刑法で胎児は「人」とみなされていない。地検は、出生前だった日七未ちゃんへの過失致傷罪が成立するかどうかを慎重に検討していた。

 9月に開かれた初公判で、児野被告は起訴内容を認め、「お二人に対するどのような処罰も受けます。本当に申し訳ありませんでした」と述べていた。【丘絢太、塚本紘平】

毎日新聞

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