美浜・高浜原発の運転認める 「具体的危険性はない」 高裁金沢支部

2025/11/28 16:42 

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 福井県内にある関西電力美浜原発3号機と高浜原発1~4号機について、地元住民らが関電に運転の差し止めを求めた2件の仮処分申請の即時抗告審で、名古屋高裁金沢支部は28日、差し止めを認めない決定を出した。大野和明裁判長は「抽象的な危険だけで原発の運転差し止めを認めるべきではない」と述べ、住民側の抗告を棄却した。

 原発の老朽化に対する安全対策の是非が即時抗告審の主要な争点だった。

 2011年3月に起きた東京電力福島第1原発事故を教訓に、原発の運転期間は「原則40年」とするルールが定められたが、原子力規制委員会の認可を受ければ最長60年まで運転期間が延長可能となる。

 美浜、高浜原発の計5基は1974~85年に運転が始まり、運転期間が40年を超えている。住民側は高温高圧の過酷な環境で運転を続ける原発は稼働年数が進むにつれて事故のリスクが高まると主張していた。

 決定はまず、福島第1原発事故を踏まえても、日本では原子力の平和利用を推進する状況にあり、裁判所が原発の運転差し止めを命じるには、住民の人格的利益が侵害される具体的危険性が存在することが必要だとした。

 その上で、原発の点検や検査結果に信頼性はなく、原発の配管が薄くなる故障が続発しているとする住民側の主張について検討。決定は「原発の運転で不可避的に発生する老朽化現象であるとしても、関電の原因調査や対策が不十分とは認められない」とし、具体的危険性は認められないと結論付けた。

 決定後の記者会見で、住民側の井戸謙一弁護士は「極めて不当な決定。具体的危険性の定義付けすらしておらず、住民側の主張を抽象的と切り捨てている。もう一度、福島のような事故が起きても仕方ないと言わんばかりだ」と語った。住民側は最高裁に不服を申し立てるか協議するとしている。

 関電は「引き続き、安全性・信頼性の向上に努める」とのコメントを出した。【島袋太輔】

毎日新聞

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