「注文を間違えるカフェ」 認知症の店員、寛容な空間に広がる笑顔
認知症の当事者が1日限定で店員になって接客する「注文を間違えるカフェ」が29日、盛岡市の喫茶店で開かれた。支援する地元の大学生や高校生とペアになって注文を聞き、配膳、片付け、会計を担当した。失敗しても寛容な店内は、笑いが絶えなかった。【山田英之】
市内の任意団体「ドリーム・シード・プロジェクト」が主催。認知症の当事者5人が参加した。支援する学生たちと開店前にレクリエーションをして親睦を深め、接客の練習もして「頑張るぞ」と気合を入れた。
会計が複雑にならないように、パスタとワッフル、飲み物のセットで料金を1000円に設定。注文を取りやすいように紙に印刷したメニューに印を付け、テーブルの番号を記入できるようにした。
認知症の女性(88)は「働けることに感謝している。若い人と仕事をするのは勉強になる。自分も頑張ろうと思える」と笑顔だった。元バスガイドの田口弘子さん(84)は「しゃべるのが好き。みなさんと和気あいあいと話していると楽しい」と接客していた。かつて市内で喫茶店を営んでいた佐藤美奈子さん(76)は「近くの大学生たちが店に来てくれたことを思い出す。いろいろな人の表情を見て、声を聞いている時間がいい」と言う。
当事者の支援をした盛岡大3年の和山楓奈さん(21)は「どこまでサポートしていいのか、どう関わっていいのか難しいと考えていたが、貴重な機会だった。将来は保育関係の道に進みたい」と話していた。
認知症の当事者に初めて接した盛岡白百合学園高2年、安部花音さん(17)は「認知症にはネガティブな(後ろ向きな)イメージもあるかもしれないが、一緒に働いた人たちの明るく前向きな姿に、こちらも笑顔になった。癒やされる温かい時間だった。本を読んだり、インターネットを見たりするよりも、百聞は一見にしかずだと感じた」と振り返った。
当事者5人には売り上げの中から給料が支払われた。主催した団体代表の山崎智樹市議は「福祉の専門職だけが認知症の当事者と接するのではなく、みんなが一緒にいられる空間を提供したい。それが社会の当たり前になってほしい。もし自分たちのことを忘れてしまったとしても、楽しい思い出が残ってくれたらいい」と語った。
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