「私だけ喜ぶわけには…」 大分火災で一部住民が帰宅、歯がゆい一歩
大分市佐賀関の大規模火災で29日、消防警戒区域が解除され、安全が確認された家では暮らせるようになったことに伴い、渡辺忠孝さん(65)は久しぶりに自宅に戻った。だが自宅から約15メートル先の住宅は焼けており、「私は戻れたが、周りの家は焼けていて一人だけ喜ぶことはできない」と複雑な表情を浮かべた。
火災発生時は自宅で入浴中だった。消防のサイレンの音が大きくなり、慌てて外へ出ると空は赤く、火の粉が舞っていた。「山手の方が燃えていたが、すぐに自宅裏の寺に飛び火した」。避難する際に何を持ち出したのか覚えていないが、避難所でバッグの中を確認すると、今年1月に90歳で亡くなった母博子さんの位牌(いはい)と遺影などが入っていたという。
65歳の誕生日も避難所で迎えた。「避難所は不便でしたが、不自由ではなかった。市職員や支援者の皆さんが本当によく助けてくれた」と感謝する。
明治3年に建てたという木造2階建ての自宅に火災や放水による被害はなく、中も住める状況という。自宅のテーブルに上には、火災の当日、食べようと思って準備していた夕食が残されたままだった。「少しずつ片付けようと思います」と話す。
焼け出された近所の人が気がかりという。周りの焼けた住宅を見渡し声を絞り出した。「みんな一緒に、昔のように暮らせればいいが、家をなくした人はいつ戻れるか分からない。私だけ喜ぶわけにいかない」【出来祥寿】
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