劇団桟敷童子の新作「一九一四大非常」 国内最悪の炭鉱事故描く
戦前、福岡県で起きた国内最悪の炭鉱爆発事故を描く、劇団桟敷童子の新作「一九一四大非常」が東京都墨田区横川1の「すみだパークシアター倉」で上演中だ。日本の一大産業だった石炭鉱業を下支えした労働者たちの過酷な日常と、大事故の中での共助の姿に視点を置いた。
福岡県方城町(現福智町)にあった三菱方城炭鉱で、1914年12月15日に発生した大規模爆発事故を題材にした。
方城炭鉱は当時では最新式の昇降機で縦の坑道を深さ270メートルまで降り、横の坑道に入る構造。爆発は午前中に起き、すさまじい爆発音とともに地底から黒煙が渦を巻きながら上空に広がった。炭鉱側の発表では犠牲者は671人でうち2割が女性。生存者は21人だった。当時、地上にいた人々の「非常や、非常や」と叫ぶ声が響き渡り、「方城大非常」と呼ばれている。
爆発の原因など謎が残るこの大事故に、同劇団を主宰する劇作家、演出家の東憲司さん(60)が着目した。福岡県出身の東さんは「自分の祖父母たちもかつては石炭産業の恩恵で生きてきた」という。今作の上演にあたり、「方城大非常」について調べると、爆発事故時、坑内にいた労働者は「1000人を超えていた」との説があった。「いまなお地底に埋もれたままの人がいて、その中には朝鮮半島から送り込まれた人がいると推測される」
舞台では必死の救助活動や遺族の苦悩、炭鉱の町でたくましく生きる人々の暮らしにも触れる。「現代の日本でも、産業や経済を支える労働者の待遇や安全がどこまで守られているのか。この史実と自分たちが生きる社会を重ねてもらえれば」と東さんは話す。
7日まで。チケットの問い合わせは劇団桟敷童子(03・5637・8902)。【明珍美紀】
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