ミャンマー人留学生、長井さん遺族と対話 反政府デモ取材中に射殺

2025/12/12 07:45 

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 ミャンマーからの留学生が多く学ぶ愛媛県今治市の今治明徳短大で11日、かつて同国で反政府デモを取材中に治安部隊に射殺された同市出身のジャーナリスト、長井健司さん(当時50歳)の妹・小川典子さん(66)を招いた特別講義があった。留学生らにはなじみの薄い事件だったが、民衆の思いを懸命に伝えようとした姿を知り、「ミャンマー人として申し訳ない」「今も母国で平和を目指す仲間を私たちも支えたい」との声が聞かれた。

 学生301人のうち91人がミャンマーからの留学生という同短大。愛媛や今治について学ぶ「地域社会論・地域交流演習」の一環で、曽祖父も採石事業者として特産の大島石の販路拡大に貢献した長井健司さんの人生を身近に感じてもらおうと企画した。

 軍事政権下のミャンマーで2007年9月、大規模な反政府デモを取材中に銃撃された長井さん。講義では事件に迫ったニュース映像を紹介後、同市在住の小川さんが登壇した。

 長く所在不明になり、23年にようやくミャンマーから返還された長井さんのビデオカメラを手にした小川さんに対し、ミャンマーからの留学生は「政府は責任を取らなかった」「申し訳ない気持ちになっています」と口々に語った。「長井さんが取材したきっかけは」と尋ねた留学生の女性(23)に対し、小川さんは「兄はミャンマーに関心を持ち続けていました。取材でタイに滞在中、『大変なことになっている』と聞いてすぐに乗り込み、激しいデモに直面し……。残念なことに死亡しましたが、(最期の姿が)全世界に伝えられ、ミャンマーの惨状を知らせることができました」と静かに語りかけた。

 ミャンマーは反軍政の武装勢力と国軍との戦闘が現在も続き、10代から20代のZ世代による武装組織が新たに反軍政の戦いに加わっている。留学生の男性(28)は「同じ世代が命をかけて戦っていて、平和な国で楽しく暮らす自分が恥ずかしいという思いもある。彼らを支えていきたい」と語った。

 地域によっては空爆が続き、留守家族や友人を心配する声も。「平和になったら(どうするか)」との教官の問いに、全員が「帰りたい」と声をそろえた。【松倉展人】

毎日新聞

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