京都市が2050年までに目指す姿は 「基本構想」を可決・策定

2025/12/12 06:45 

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 わたしたち京都市民は、京都市が、わたしたちと世界中のあらゆる人々にとって、歴史と文化を介して人間性を恢復(かいふく)できるまち、自然への畏敬(いけい)と感謝の念を抱けるまち、そして、自他の生(せい)をともに肯定し尊重し合えるまちであり続けるために、不断(ふだん)の努力を重ねていく。

 京都市の「京都基本構想」が11日、市議会で可決、策定された。構想は2050年までの市政の基本方針となり、人類社会に視野を広げて「このまち」の価値を示し、目指す姿を掲げる。「京都の奥深さが人類を救う一助になる」との思いを込めたという起草者は、平成生まれの哲学研究者。「スルメのようにこの文章を噛(か)んで心に響いた部分を共有いただきたい」と松井孝治市長の口調も熱を帯びる。

 構想を審議する5日の市議会特別委員会では、「京都らしい」(自民)▽「読み応えがある」(維新)▽「平和への思いが込められ万感」(公明)――と賛意を示す市議が多かった。松井市長の答弁も、自国中心主義で分断が進む世界の現状に及んだ。

 一方で、「抽象的で幅広く解釈できてしまう」(自民)▽「市民に読んでもらえる文体にするべきだ、と言うべきだった」(改新京都)――との指摘もあった。松井市長は、若手職員が参加した議論でも「難しい」という声があったと認めつつ「千年の都だから1000年先を考えようという声もあった。まちの背骨のような価値観を示したい」と構想の意義を説明した。

 京都市は1983年以降、基本構想を定めており、今回は3代目。学術、文化、経済など各界の有識者でつくる市総合計画審議会(会長=宗田好史・府立大名誉教授)で、24年10月から1年近く議論された。起草者となった、上京区在住で米ハーバード大研究者の野村将揮(まさき)さん(36)は、特別委員として審議会に加わり、官民の若者チームの議論も踏まえ文案を練った。パブリックコメントには1514件の意見が寄せられた。

 実は市が「最上位の理念」と定めるものに、78年の「世界文化自由都市宣言」がある。戦後の文化人を代表する桑原武夫、梅原猛両氏を中心に起草され「都市は、理想を必要とする」で始まる約400字の名文。「その理想が世界の現状の正しい認識と自己の伝統の深い省察の上に立ち、市民がその実現に努力するならば、その都市は世界史に大きな役割を果たすであろう」と京都を意義づけたものだった。

 今回の構想は約1万5000字に及ぶが、宣言を踏まえて構成されている。序文で掲げた三つの「まち」を後半で詳述。最終章は市民だけでなく、観光で訪れる人も含めた多くの人々と共に進む、との決意で結ぶ。

 市議会では、どう市民に広げるのか、施策にどう反映させるのかも議論になった。策定を受け、野村さんは取材に「人類の遺産たるわたしたちの京都市の保全と継承に皆様と尽力したい」とした。【南陽子】

毎日新聞

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