中井やまゆり園、個別支援計画を当事者抜きで作成 神奈川県が点検へ

2025/12/11 21:06 

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 神奈川県は11日、県立知的障害者施設「中井やまゆり園」(中井町)を現在利用している全81人の福祉サービスの内容などを決める個別支援計画が、障害者総合支援法の施設運営基準に従わず、当事者抜きで作成されていたと発表した。過去にさかのぼれば人数はさらに多くなる可能性がある。県は外部有識者を招き、これまでの支援計画を点検する。【蓬田正志】

 2016年に同じ県立の知的障害者施設「津久井やまゆり園」(相模原市)で入所者ら45人が殺傷された事件を受け、県は共生社会の実現を目指す「当事者目線の障害福祉推進条例」を制定するなど、障害者施策を進めてきた。だが、そうした姿勢に反して当事者の声が軽んじられていたことになる。

 支援計画は少なくとも半年に一度作成され、その内容に沿って福祉サービスが実施される。施設側は利用者らの意向を踏まえてサービス内容や提供方法、目標などを盛り込むことになっている。

 県によると、今年8月に利用者1人の支援計画を園と家族で協議した際、不備が指摘された。このため園で自己点検したという。

 同法の施設運営基準では、支援計画を作る際、施設側が利用者に趣旨を説明して面接をしなければならないと定めている。さらに24年4月の基準改正で、計画案を作成する担当者会議に利用者の同席が必要とされた。

 だが県によると、現在の利用者81人の面接記録が全員分なかった。県庁で記者会見した井上一園長は「記録がない以上、(面接は)できていないと言わざるを得ない」と説明。会議に利用者を同席させていなかった点については「認識が欠けていた」と陳謝した。

 中井やまゆり園では職員による利用者への虐待などがあり、23年7月から改革プログラムを実施している。県は現場の負担になるなどとして、監査を21年9月から25年8月まで実施せず、不備に気づかなかったという。

毎日新聞

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