税制改正で「狙われると…」 租特見直し案固まる 財源捻出は不透明
11日に明らかになった自民党の2026年度税制改正大綱案の概要で、焦点となっていた企業の税負担を軽減する租税特別措置(租特)の見直し案が固まった。ガソリンと軽油の暫定税率廃止で失われる約1・5兆円の財源確保策と位置づけられ注目を集めてきたが、今回の税制改正で十分な財源を捻出できたかは不透明だ。
「財源を生み出すというよりは、より効果的な方向に租特を変え、見直していくことが大切だ」。この日の自民の税制調査会の会合後、小野寺五典税調会長は、租特の見直しについてこう強調した。
租特のうち、賃上げした企業の法人税を減税する賃上げ促進税制は、大企業向けを26年度に廃止することとなった。25年の春闘での賃上げ率は2年連続で5%を超えるなか、中小企業の人手不足を助長する可能性がある点を考慮した。中堅企業向けについても、26年度は適用条件を厳しくし、27年度に廃止する。中小企業向けは「防衛的賃上げ」が多いとして当面現状維持とする。
この日の非公開会合では、閣僚経験者から「大企業は自分で原資を作って賃上げすべきだ。諸外国では当たり前のことをやらないと日本の大企業は国営企業になる。税優遇がないと賃上げしないなら意味がない」と指摘する声が上がった。その一方で「地方を再興するために必要な中堅企業も対象になってしまう。再度見直しを」と求める声もあった。
一方、企業の大胆な設備投資を促す租特として、法人税から投資額の7%を差し引くなどの減税策が設けられることになった。対象は一定条件があり減税規模は約4000億円前後になる見込みだ。経済産業省は元々、控除率8%を求めていたが、ある自民商工族幹部は「満額回答だ」と歓迎した。
研究開発をする企業の法人税負担を減らす研究開発税制についても、一部が見直されるものの、人工知能(AI)や量子技術などを対象に、既存の税制とは別枠で研究開発費の40%を控除する「戦略技術領域型」が創設された。
ある経産省幹部は「暫定税率が廃止になった以上、租特が狙われることは分かっていた。強い経済を掲げる高市早苗首相だからこそ経産省は守り切れたと思う」と声を潜めた。租特の見直しは財源確保につながるのか。この幹部はこう漏らした。「1・5兆円の穴を埋めることにはならないのではないか」【妹尾直道、古川宗、中島昭浩、高田奈実】
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