年収の壁168万円、復興増税10年延長 自民が税制改正大綱の原案
自民党は11日、来週にも決定する2026年度税制改正大綱原案の概要をまとめた。所得税がかかり始める「年収の壁」については、160万円としている現行の課税最低ラインを物価上昇を反映し168万円とした。今後の与野党協議でさらに引き上げられる可能性がある。防衛力強化に向けた所得増税の実施に向けて、一部を振り替える東日本大震災の復興増税の期間を10年延長する。富裕層への課税強化や住宅ローン減税の拡充、投資促進減税なども進める。
一方、自動車取得時にかかる税金「環境性能割」は、高市早苗首相が「2年停止」に意欲を見せているが、廃止を求める声もあり、この日の結論を持ち越した。
「年収の壁」の見直しでは、過去2年間の物価上昇を反映。年収に応じて異なるが、所得税の「基礎控除」を原則58万円から62万円に、給与をもらう会社員が対象の「給与所得控除」の最低保障額を原則65万円から69万円にそれぞれ引き上げる。年収190万円以下の人の場合は、現行の特例加算を踏まえると168万円となる。国民民主党は178万円への引き上げを求めており、玉木雄一郎代表は11日、「とても納得できないしだめだ」と批判した。自民は12日にも国民民主と協議する見通しだ。
富裕層への課税強化策では、追加の税負担を課す年間所得の目安を約30億円から約6億円に引き下げ、税率を22・5%から30%に引き上げる。増収効果は数千億円に上るとみられ、ガソリン暫定税率などの廃止に伴う代替財源の一部に充てられる見通しだ。
同様に代替財源の確保策としても注目される法人税の見直しでは、賃上げした企業の法人税を減税する賃上げ促進税制のうち、大企業向けを26年度に廃止する。ただ、企業に大規模な設備投資を促すため、一定条件を満たせば投資額の7%を税額から差し引く減税策を設けるほか、人工知能(AI)などの戦略分野で研究開発税制の減税を上乗せするため、大幅な財源確保につながるかは見通せない。
このほか、今月末までとなっていた住宅ローン減税の期限は、5年延長した上で、中古住宅への支援を拡充する。配当などの利益が非課税となる少額投資非課税制度(NISA)は、投資信託を定期的に積み立てる「つみたて投資枠」を18歳未満にも解禁し、総額600万円(年間60万円)まで投資できるとした。【井口彩、妹尾直道、遠藤修平、安部志帆子】
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