後発地震注意情報下 青森・八戸の朝市は出店数半減、開催に異論も

2025/12/16 16:22 

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 巨大地震への備えを呼びかける「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は16日午前0時で終了した。通常の社会経済活動を続けながらの対策が求められる中、青森県八戸市では国内最大規模の朝市が避難経路を再確認するなどして実施に踏み切ったが、参加店舗は半減。「また地震が起きたらどうするのか」と不安視する声も上がった。

 何隻ものイカ釣り漁船が停泊する八戸漁港。14日の夜明け前、雪交じりの雨が降る中、岸壁に並んだ店舗から売り子の威勢のいい声が響いた。

 「ガンバルベ!」と書かれた看板を掲げた大安食堂のブースには手羽先を揚げた名物の「しおてば」目当ての行列ができた。荒沢忠明社長(58)は「いつもより売り上げは少ないが、今日は出店することに意義がある。常連さんにも『地震は大丈夫だった』とあいさつできた」と笑顔を見せた。

 館鼻岸壁朝市は2004年に始まり、25年は3月からほぼ毎週日曜に開かれてきた。

 だが今回の地震で八戸市は震度6強を観測し、津波警報も出た。後発地震注意情報の発表を受け、主催する湊日曜朝市会の慶長春樹理事長(73)の元には反対意見も寄せられたが、「我々は常に津波を意識して運営してきた。この岸壁で元気にやっている姿を見てほしい」と開催を決めた。

 各店舗には朝市から徒歩で10~15分かかる高台までの経路を再確認してもらい、地震が発生した際は来場者の避難誘導を徹底するように要請。会場には高台までの経路が書かれた地図が掲示された。

 東京都町田市から来た主婦、菊地次美さん(63)は「津波に注意するよう呼びかけるアナウンスもあり、安全への配慮は感じられた。心配もあったが来て良かった。八戸でお金を使うことで少しでも助けになれば」と各店を巡った。

 一方、海産物を販売していた別の店ではスタッフ(51)が「店もまばらで客も少ない。普段通りとはいきませんね」と漏らし、早々と店じまいした。

 普段は全長約800メートルにわたって約300店が並ぶが、この日は半数程度。いつもは2万人以上にもなる来場者も半減した。「危険なのでは」と家族から反対され、出店を取りやめた店主もいたという。

 懸念を示す地元住民もいた。市中心部の飲食店経営者は「朝市は町の名物でやりたいという気持ちは分かるが、今は自重すべきだと思う」と打ち明けた。

 政府は後発地震注意情報について、2年に1回程度は発表が見込まれるとしている。市は今回、事前に主催者に開催の意向を確認したといい、熊谷雄一市長は「十分に注意して実施してほしいとお願いした」としている。

 慶長理事長は「SNS(交流サイト)上に批判が書き込まれもしたが、無事に終了できほっとしている。社会経済活動を維持しながら警戒するというのは難しいことだが、これからも安全には十分に注意してやっていきたい」と話した。【竹田直人】

毎日新聞

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