厚木基地周辺の住宅防音工事、助成対象を縮小へ 面積15分の1に
米海軍厚木基地(神奈川県綾瀬市、大和市)の航空機騒音対策を巡り、防衛省南関東防衛局は22日、騒音が軽減されたとして、住宅防音工事の助成対象区域の“見直し案”に相当する新区域を公表した。現行区域と比べて面積は15分の1に激減し、対象世帯数も2割以下になる。
米軍機と、基地を共同使用する海上自衛隊機による騒音は現在も発生しており、現行区域の地元からは反発や疑問の声が予想される。
国は厚木基地周辺の騒音調査を実施し、騒音の程度を示す「うるささ指数」(W値)を測定。75W以上の区域にある住宅に対して防音工事の費用を助成している。現行の助成区域は2006年に指定したが、米海軍空母艦載機部隊が岩国基地(山口県)への移駐を18年に完了したことから、厚木基地周辺では飛行の頻度が低下したとされる。防衛局は区域を騒音の実態に即して見直すため、22~24年に再度の騒音調査を実施していた。
新たな調査結果を受けて今回公表したのは、75Wにあたる新指標「Lden62デシベル」騒音コンター(輪郭線)の線引きで、綾瀬、大和、藤沢の3市にまたがる推定約700ヘクタール。現行の区域は3市と茅ケ崎、海老名、座間、相模原、町田(東京都)の計8市にまたがる約1万500ヘクタールに及んでおり、激減となる。防音工事の助成対象も約26万6000世帯から推定約4万7000世帯に減少する。
防衛局はこの線引きを基に、3市に意見を聴取した上で、道路沿いなどに落とし込んで新たな助成対象区域を決める。26年3月までに告示し、周知期間を経て27年秋ごろ指定する。併せて現行区域は廃止するが、現行区域の防音工事の希望届は同秋ごろまで受け付けるという。
防衛局によると24年度末時点で、現行区域の工事は希望世帯の約8割が済ませている。
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一方、防衛局は、75W以上85W未満の全ての区域で、住宅防音工事の助成対象範囲を06年1月17日までに建てられた住宅に拡大することを明らかにした。これまでは助成対象を1986年9月10日までに建てられた住宅に限っていた。工事の希望届は27年秋ごろまでの受け付けを予定している。
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助成対象区域の見直しについて、県内の首長や市民団体からは相次いで意見が上がった。黒岩祐治知事は「住民に寄り添った丁寧な対応が必要だ。市と連携し(国に)必要な働きかけを行っていく」などとコメントを発出。防衛局に対し、工事を希望する住民に不平等が生じない対応を取ることなどを要請したと明らかにした。
区域から外れる市の一つ、相模原市の本村賢太郎市長は「現在も一定の騒音が発生している。国に騒音防止に努めることを求めるとともに、騒音被害の実態などを注視する」などとコメント。大和市の古谷田力市長、綾瀬市の橘川佳彦市長も、国に丁寧な説明を求める談話を発表した。
また、第5次厚木基地爆音訴訟原告団は、今年から騒音の大きい機種が運用されているなどとして「国が調査した時点と騒音被害が著しく相違している。国は今回の見直し案を撤回して、測定や対策を根本的にやり直すべきだ」とコメントした。【佐藤浩】
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