防災を「自分ごと」にするには? 福井県の出前授業、1万人以上受講
災害はいつ起きるかわからない。だからこそ、継続性は防災教育において重要な要素の一つだ。2004年の福井豪雨を契機に福井県が始めた防災出前授業は21年目を迎え、これまでにのべ1万人以上が受講している。
「洪水が来たらどうやって避難所の学校まで行く?」「家にある浮輪とか使えるかな」。「外に出られないくらい水が高かったら?」「家の2階に上がる」「ぼくの家は(浸水想定が)0・5メートルだからそこまでは来ないはず」――。
昨年11月、山あいにある同県勝山市立三室小での教室。ハザードマップを囲んだ小学生同士で、高学年児童の問いかけに下級生が答えていく。大人顔負けの想像力と真剣味が発揮されるのも、地図が校区内のもので、まさに「自分ごと」だからだ。
授業では、同市を管轄する県奥越土木事務所の山品剛主任が、市内で洪水や土砂災害があった場所を説明した。地図上に記した目印は、ラーメン店や「100均」など、小学生もイメージしやすい場所ばかりだ。職員は「22年8月にも洪水は起きました。人ごとではないことを覚えておいて」と念を押した。
授業後、酒井心煌さん(6年)は「自分の家も危険区域に入っていた。食料など、避難する準備をしようと、両親にも伝えたい」と表情を引き締める。誰に促されるでもなく、下級生に問いかけをしていた山内青依さん(同)は「災害の時は低学年優先と教わっている。1、2年生には難しいと思ったので、どこが危ないか少しでも分かりやすく伝えようと思った」と話した。
県によると、出前授業は24年度までに、のべ307校1万1281人が受講した。小学5年の理科や社会の内容をベースに構成しているが、職員が学校側の希望を聞き取った上で、校区の地図や危険箇所を明示した資料を毎回作り直す。三室小での授業で、ラーメン店などを目印にしたのは、教諭らに児童がよく行く場所を聞き取った結果だ。山品主任は「手間はかかるが、身近な物を題材にするからこそ実感もわき、身になる」と狙いを話す。
同小の高村光昭教頭は、出前授業の資料について「地域を理解した専門家にしか作れない」と、学校単独での限界を超えた内容に感謝。「低学年もいる中、ゲーム感覚で考えることを楽しめていた。危険箇所も地図で見せられ、どこのことを言っているか、児童の中でつながっていた」と学習効果を実感していた。
出前授業の依頼は、中山間地や河川沿いの学校から多く、大規模災害の直後は特に増えるのだという。忘れてはいけないことを語り継ぐには、工夫や手間が不可欠。地道に、確かに続く活動からは、そんな教訓が見えてくる。【高橋隆輔】
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