「会いにきたよ」慰霊の地下空間で感じた5082人の魂 阪神大震災
阪神大震災から31年を迎えた17日、神戸市中央区の東遊園地で「1・17日のつどい」を取材した。同園にある犠牲者を追悼する「慰霊と復興のモニュメント」の地下の空間には5082人の銘板が張られている。訪れた人たちはまるで、その人に触れるかのようにそっと手を当てていた。【菊池真由】
モニュメントから地下への階段を下りると円形の「瞑想(めいそう)空間」がある。教室一つ分ほどの広さで360度の壁に犠牲者や支援者の銘板が張られている。
「藤本光広」「藤本生夫」。二つの銘板を何度も何度も丁寧になぞっていた女性に声をかけると胸の内を語ってくれた。明石市に住む大谷成美さん(58)。震災で当時33歳の兄の光広さんと当時60歳の父親の生夫さんを亡くした。
光広さんと生夫さんは、神戸市兵庫区の2階建てアパートの1階に住んでおり、2階部分の下敷きになった。別の場所に住んでいた成美さんは地震発生から1時間後にアパートに駆けつけたが、光広さんはすでに亡くなっていた。生夫さんは話ができたが、たんすが斜めに倒れた空間に挟まっていた。「(たんすが)だんだん、だんだん沈んでいって……。苦しい、あかんと言っていた。それが最後に聞いた言葉だった」とぽつり。「1月が来るのがつらいんです。いまでもあの時の記憶が染みついている」と涙を流した。
銘板には名前しか刻まれていない。しかし、その名前をティッシュで何度も磨いたり、名前に向かって「会いにきたよ」と話しかけたり……。誰かが触れて、語りかけるたびに、魂のようなものがそこにあるように感じられた。
瞑想空間で取材を続けていると、静まり返った場にそぐわないほど大音量のロック調の音楽が鳴り響いた。音の鳴る方を見ると、金髪の男性がしゃがみ込んでいた。男性はスマートフォンで音楽を流し続け、数十分間微動だにしなかった。「思い出の曲だったのかな、昔一緒にバンドをしていたのかな」。話を聞くことはできなかったが、音楽が頭の中で鳴りやまず、涙がこみ上げてきた。男性の後ろ姿と軽快な音楽を、私は忘れることはないだろう。
瞑想空間には毎年、銘板が追加されている。今年は被災が遠因で亡くなった「遠因死」や復興の功労者らを含めて12人。「生きた証」が刻まれ、多くの人にとって心のよりどころとなり、「震災について思いをはせる場」として、ずっとこの場所が残り続けてほしいと思った。
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