危険運転認定も「つらい気持ちは癒えない」 伊勢崎3人死亡事故
群馬県伊勢崎市の国道でトラックを飲酒運転し、家族3人を死亡させる事故を起こしたなどとして自動車運転処罰法違反(危険運転致死傷)に問われた同県吉岡町の元トラック運転手、鈴木吾郎被告(71)の裁判員裁判の判決で、前橋地裁は13日、危険運転の成立を認め、求刑通り法定刑の上限の懲役20年を言い渡した。
飲酒の影響に関する自動車運転処罰法の改正が議論される中、前橋地裁が出した判断は過失ではなく、故意の飲酒による危険運転だった。厳罰を求めてきた遺族は「私たちの思いは通じた」と語った。
事故が起きた日、塚越寛人さん(当時26歳)の妻は、前橋市の自宅で夕食の準備をしていた。寛人さんと長男湊斗ちゃん(同2歳)、寛人さんの父正宏さん(同53歳)は埼玉県のレジャー施設に行った帰りに、鈴木吾郎被告(71)のトラックに衝突された。救急隊からの連絡で妻は病院に駆けつけたが、3人とも即死に近い状態だった。
妻は当時、次男を身ごもっていた。火葬までの5日間、妻は寛人さんと湊斗ちゃんの間で眠った。夫の顔は傷だらけ。長男の小さな手を握り続けたが、柔らかな肌は徐々に色を失い、乾いていった。2カ月後、次男を出産し、新たな命を育むことに追われた。少しだけ事故のことを考えない時間もできたが、次男の仕草に湊斗ちゃんを思い出さずにはいられなかった。うつ病とも診断された。
群馬県警は2024年8月、鈴木被告を危険運転致死傷容疑で逮捕したが、前橋地検は法定刑が軽い過失運転致死傷で起訴した。「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」の立証が十分ではないとの判断だった。「飲酒をして過失なんて到底納得いかない」。妻は厳罰化を求める署名活動を始め8万3321筆を集めた。地検は約1カ月後、危険運転へと訴因を変更した。
法廷での被告側の対応には憤りしか感じなかった。車内で見つかった焼酎の空容器は「青汁を入れて飲むため」と強弁した。被告は最後の意見陳述で突然、土下座をしたが、真摯(しんし)な反省は最後まで伝わってこなかった。
判決後の記者会見で妻は「被告は目は開いて、しっかり(判決を)聞いていた。自分が犯した罪に向き合う時間になったかと思う」と述べた。それでも3人の命は戻ってこないとし、「この先もつらい気持ちは変わらない。紛らわせて生きていくのだろう」と癒えない心の傷を語った。
危険運転致死傷を巡っては、政府が飲酒運転の適用要件に数値基準を新設する改正法案を国会に提出する方針だ。新たな基準は「血液1ミリリットルあたり1・0ミリグラム以上のアルコール濃度」となる見込みだが、判決が認定した被告の血中のアルコール濃度はこれを上回っていた。
法改正について妻は「基準以下なら飲酒してもよい」との誤った認識が広まることを懸念する。寛人さんの祖母も記者会見で「そもそもお酒を飲んだら運転してはいけないのが根本だ」と訴えた。【加藤栄、福田智沙】
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