iPS脊髄損傷治療、27年にも臨床試験 慶応大発ベンチャーが開発
人工多能性幹細胞(iPS細胞)からつくった神経のもととなる細胞を脊髄(せきずい)損傷患者に移植する再生医療製品の実用化に向け、慶応大発ベンチャー「ケイファーマ」(東京都港区)は24日、2027年中にも臨床試験(治験)を開始すると発表した。脊髄損傷が対象のiPS細胞を使う治験は世界初とみられる。
慶応大の岡野栄之教授らの研究チームが臨床研究を進めてきた。21年12月から患者4人に1人当たり約200万個のiPS由来の細胞を移植。リハビリを実施しながら1年間経過観察した。
いずれも脊髄損傷から2~4週間たった「亜急性期」で、運動機能や感覚が失われた「完全まひ」の患者。2人の重症度が改善し、重篤な副作用は確認されなかった。
治験でも同様に細胞を損傷患部に注射で移植する。移植した細胞により、脳の信号を伝える組織を新たにつくったり、傷ついた神経系回路の修復を促したりして、運動機能や感覚の回復を目指す。
同社によると10人未満程度へ移植する予定。臨床研究での条件を参考にし、より最適な移植時期や細胞数を検討する。岡野教授は「研究を始めて25年、臨床の条件設定ができてきた。一日も早く患者さんに届けたい」と語った。30年代前半の実用化を目指すという。
神経のもととなる細胞の製造はニコン子会社「ニコン・セル・イノベーション」に委託。同社は事前に貯蔵し、亜急性期の患者が出た際に解凍する。手術は複数の医療機関で実施する予定という。
交通事故などで脊髄を損傷する患者は年間約6000人発生する。脳からの体への指令が届かなくなり、重症だと手足のまひなど運動や感覚の障害が残る。従来の医療技術では、リハビリでわずかに残る機能の回復を目指す程度にとどまる。
患者は国内で10万人以上いるとされ、大半が損傷から半年以上で改善が難しいとされる慢性期だ。チームは慢性期の患者に対しても、iPS細胞を使った別の手法の開発を進めている。【荒木涼子】
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