歯舞湿原に黒い帯…現場に残るにおいが物語る火災のすさまじさ

2026/04/26 10:15 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 北海道根室市で大規模な林野火災が16日に起きてから1週間以上が経過した。現場は湿原で、ポンプ車での放水が困難を極める中、道の防災ヘリや災害派遣要請による自衛隊のヘリコプターも出動して消火活動にあたった。

 今回の火災では、根室市指定天然記念物「歯舞湿原」が広範囲に焼けた。市自然と歴史の資料館が18、19の両日、現地調査した結果、市天然記念物に指定された範囲(263・1ヘクタール)の約47%(約124ヘクタール)を焼失したことが判明した。焼けたのは枯れたヨシやスゲが大半で、その下部にある日本で唯一の「ブランケット型泥炭地」まで火は達していなかった。

 鎮火した翌日の18日早朝、約328ヘクタールに及んだ火災の現場を歩いた。標高約33メートルの台地上に形成された歯舞湿原。緩やかな起伏の湿原に、焼け焦げた黒い帯が広がり、延焼のすさまじさを物語る。一帯にはバーベキューのようなにおいが立ち込めていた。

 小雨が降る中、被災現場の写真を撮影していると、市天然記念物に与えたダメージを調べに資料館の外山雅大学芸主査らが現れた。GPS(全地球測位システム)により焼けた範囲を確定し、延焼の状況や深度を把握するための調査だという。現地調査に同行させてもらった。

 「焼けたのは、枯れたヨシやスゲが主体ですね」と外山さん。歯舞湿原は高層湿原で、ツルコケモモやミズゴケの群落が広がっているのが特徴。「これらの群落の焼損は、それほど大きくありません」と見ていた。

 「火は湿原の表層の枯れたヨシやスゲをなでるように延焼したようです。水分を多く含むミズゴケは、燃えにくかったのかもしれません」

 ただ、土壌の凍結と融解の繰り返しによって形成された楕円(だえん)形状の起伏「アースハンモック」は、土まんじゅうのように突き出していることから延焼を免れなかった。外山さんは「回復には一定の時間を要するかもしれません」と顔を曇らせた。

 歯舞湿原は、水の流入がない緩やかな斜面の台地上にある。雪解け水と降雨、濃霧によって水が供給され、泥炭層が1万年以上の長い年月をかけて毛布で覆うように形成されたブランケット型泥炭地だ。国内唯一の貴重な湿原として、2023年に根室市天然記念物に指定された。【本間浩昭】

毎日新聞

社会

社会一覧>