「見えない鎖が強化」 共同親権の懸念 DV被害者が映画で訴え

2026/05/26 17:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 離婚後も両親が共に親権を持つことを可能にする共同親権が導入された今年、家庭内暴力(DV)被害者らが製作に参加した映画が全国各地のミニシアターで上映されている。離婚後も見えない「鎖」のように、元配偶者との関係が共同親権によって強化されるのではないか――。映画は当事者らの切実な懸念を訴えかけている。

 映画「五月の雨」(冨田玲央監督)。離婚しても元配偶者からの支配が続く恐怖を再現ドラマと、DV被害者らへのインタビューでリアルに描いている。

 ドラマは、妻の服装や家事などに対し、陰湿なダメだしを繰り返すモラハラ夫に苦しむ女性を軸に展開。長引く離婚調停で、夫が主張した共同親権を受け入れたことで、離婚後も子どもの進路問題などに執拗(しつよう)に介入するなど支配関係が続き、苦しみ続ける。

 ◇実体験を元に台本制作

 映画製作は、元家庭裁判所調査官の立場から制度の問題点を訴えてきた熊上崇・和光大教授が2024年5月に発案。当事者や支援者らでつくる「ちょっと待って共同親権ネットワーク」が、身を潜めて暮らす当事者の声を映像で可視化しようと企画した。被害者の視点で問題点を描こうと、当事者一人一人が披露した実体験を元に台本を制作。理解してもらいやすい構成になるように意見を述べ合うなどしており、当事者が製作に深く関わることは珍しいという。

 製作資金はクラウドファンディングで募った。目標額の500万円を超える寄付が集まり、25年5月末に完成にこぎつけた。今年3月には「貧困ジャーナリズム大賞特別賞」を受賞した。

 ◇面会中に娘殺害され

 「元夫に会わせなかったら娘は生きていたのに」。9年前、離婚後の面会交流中に元夫に長女侑莉(ゆうり)ちゃん(当時4歳)を殺された兵庫県の女性(47)も、映画の中で実体験を語っている。

 女性は10年に元夫と結婚したが、腹を立てると家財道具を壊すなどのDVに苦しみ離婚。親権は女性が持っていたが、元夫が娘との面会を強く希望し、家裁は審理の末に元夫の要求を許可。17年4月の面会当日、元夫は自宅で娘を殺害し、自ら命を絶った。

 女性によると、元夫が離婚後に勤務先を休職し、精神的に不安定になっていたが、それを知ったのは事件後だった。女性は「元夫の異変を把握していたら対策が取れたかもしれない」と悔やみ、「共同親権だと別居親の権限がさらに強まってしまう。二度と私のような悲しい思いをする人が出ないようにしてほしい」と声を震わせた。

 ◇自主上映も募集

 映画は、東京や横浜、名古屋のミニシアターなどで上映されている。自主上映会の主催先も募っている。同ネットワークによると、これまで約50カ所で開催されてきたといい、「自分には無関係でも身近に当事者がいるかもしれない。子どもの権利にかかわる問題を考えるきっかけにしてもらえたら」と呼びかけている。30日からは「第七芸術劇場」(大阪市淀川区)でも公開される予定。【広瀬晃子】

毎日新聞

社会

社会一覧>

写真ニュース