真夏の災害関連死を防ぐには 専門家が警鐘「対応が結果を左右」

2026/08/05 16:30 

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 熊本地震では、避難所だけでなく車中泊や屋外での避難を余儀なくされる人も少なくない。2016年の熊本地震では、建物倒壊などによる直接死を大きく上回る「災害関連死」が発生した。専門家は「これからが関連死を防ぐ重要な時期だ」と警鐘を鳴らす。

 産業医科大の立石清一郎教授(産業衛生学)は「災害関連死は発災直後ではなく、避難生活が長引く中で積み上がる。初動の混乱が落ち着いた後の対応が結果を左右する」と指摘する。

 ◇持病の治療中断が命取り

 災害時は、お薬手帳を持たずに避難したり、かかりつけの医療機関や薬局が被災したりして持病の治療が途切れることがある。

 高血圧や糖尿病、てんかん、精神疾患などの治療薬は、急に飲まなくなると健康に大きな影響を及ぼしかねない。特に抗凝固薬や抗てんかん薬、ステロイドは自己判断で中止すると危険。手元になくなった場合は早めに医療機関や薬剤師へ相談することが必要だ。

 透析や在宅酸素療法、CPAP(睡眠時無呼吸症候群の治療機器)、インスリン治療などは、短期間での中断でも命に関わる恐れがある。停電で医療機器が使えなくなる場合もあるため、患者や家族は早めに医療機関や支援窓口に相談し、継続できる体制を確保したい。

 ◇車中泊と猛暑への対策

 避難生活では活動量が減り、筋力や体力が低下しやすい。16年の熊本地震では、車中泊を続けた人に肺塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)が発症し、死亡例も報告された。予防には、長時間の同じ姿勢を避け、十分な水分を取り、足首やふくらはぎを動かすことが有効だ。

 さらに今回は真夏であることから、熱中症への警戒も欠かせない。避難所や自宅でも涼しい場所で過ごし、こまめな水分・塩分補給を心掛けたい。復旧作業に当たる人も無理をせず、適度に休憩を取る必要がある。

 日本災害医学会によると、被災地では停電が続いた数日間に高齢者の熱中症による搬送が相次いだとみられ、熊本県八代市の特別養護老人ホームで入院者が出たケースも報告された。

 電気の復旧が進んでも断水が続く地域があり、施設によっては冷却設備を十分に使えない状況もある。水が限られる中でも、ぬれたタオルで体を拭いたり、手足を冷やしたりすることは有効とされる。

 同学会の阿南英明理事は3日の記者会見で「水の供給は足りておらず、飲料用が優先されることで、体を冷やすのに水を使うことに被災者が抵抗を感じる可能性もある。水の供給体制を充実させる必要がある」と指摘した。日本救急医学会の神田潤医師は「飲料用ではない水をためておき、手足をつけるだけでも熱中症対策になる」と語った。

 ◇睡眠不足と感染症にも注意

 災害後は不安や環境の変化で眠れなくなる人が多い。睡眠不足が続くと血圧が上がり、心筋梗塞(こうそく)など脳卒中のリスクが高まる。真夏は夜間も暑さが残りやすく、停電によるエアコンや扇風機の停止が体調悪化に拍車をかける恐れがある。

 避難所など人が集まる場所では、かぜや新型コロナウイルスなどの呼吸器感染症にも注意が必要だ。高齢者や持病のある人は重症化しやすいため、手洗いや換気など基本的な対策を徹底したい。

 ◇一人で抱え込まない

 災害による心の負担は、生活再建が始まる段階で強まることがある。先の見通しが立たない状況では、不安や落ち込みが続いても特別なことではない。立石教授は「一人で抱え込まず、家族や仲間、相談窓口とのつながりを保つことが大切だ」と呼び掛けている。【河内敏康、寺町六花】

毎日新聞

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