震災30年 黒ジャージー神戸がささげる大勝 ラグビー・リーグワン

2025/01/19 18:54 

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 ◇ラグビー・リーグワン第5節

 ◇○コベルコ神戸スティーラーズ(神戸)50―22浦安D―Rocks(浦安)●(19日、ノエビアスタジアム神戸)

 特別な一戦を神戸が今季最多50得点の大勝で飾った。地元を襲った阪神大震災は17日に発生から30年を迎えた。伝統の赤でなく、犠牲者の鎮魂を願う追悼行事をイメージし、黒を基調にしたジャージーに身を包んだ。3トライを挙げたWTB松永貫汰は「市民や多くの方の助けがあって今がある。選手全員がこの試合に懸ける思いが強かった」と節目に思いをはせた。

 今季、既に3敗と低調な滑り出しの神戸だが、集中力が研ぎ澄まされていた。象徴的な場面は10点リードの前半30分。球はタッチラインの外に出たが、クイックで再開。SOブリン・ガットランドが逆サイドにキックパスを繰り出し、松永が捕球してトライを決めた。「絶対に負けられない気持ちがあり、常にスイッチを切らさない」。あふれる思いを時に熱く、時に冷静にプレーで表現した。

 チームは神戸の復興のシンボルだ。

 震災は前身の神戸製鋼が日本選手権7連覇を達成した2日後に起きた。グラウンドは液状化し、本社が全壊した。しかし、そこから立ち上がり、5年後に日本一に返り咲いた。チームは今、25歳の松永ら多くが震災を知らない世代になったが、OBに当時の話を聞く機会を設け、追悼行事「1・17のつどい」に初めて選手全員で参加し、数週間前から学びを深めてきた。

 神戸市出身で24歳の李承信は昨年初めて、プライベートで「つどい」に参加したという。きっかけは昨季に来日し、今季も指揮を執るデイブ・レニー・ヘッドコーチの存在だった。「初めて神戸に来たレニーはつどいに参加したのに、神戸で生まれ育った自分は参加したことがなかった。神戸に対する思いに感銘を受けたし、自分もしっかり行動しないといけないと思った」と振り返る。

 30年の節目を起点に「鉄の結束」は強まった。「誰を代表し、何のために戦うのかを良いモチベーションに変えて結果を積み上げたい」。共同主将を担う李はチームを代表して誓った。【長宗拓弥】

毎日新聞

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