尹氏支持者が暴徒化 「無法地帯」 裁判所に侵入しガラス破壊も

2025/01/19 20:37 

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 韓国のソウル西部地方裁判所が19日未明に尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の拘束継続を認める令状を発付すると、裁判所周辺でデモをしていた尹氏支持者らが暴徒化。裁判所の建物に侵入して窓ガラスを割るなど、大きな混乱が起きた。

 インターネット上に公開された映像には、発付を決めた裁判官の名前を呼びながら「出てこい」と叫ぶ集団が、制止しようとする警察官に向かって突進する様子が映っている。韓国メディアは「無法地帯」「憲政史上、類を見ない事態」と報じた。

 19日午前3時前後、令状発付の速報を聞いた支持者らは激しく反発。朝鮮日報などによると、支持者は「これは内戦だ」などと叫び、100人以上が敷地内に流れ込んだ。一部の支持者らは警察から盾などを奪い、裁判所の窓ガラスなどを破壊。さらに同3時20分ごろに建物内部に入った。

 内部では「尹錫悦大統領!」などと叫び、テレビや電子機器などを壊した。一部は令状を発付した車恩京(チャウンギョン)部長判事を探して5、6階まで侵入。車氏は安全のため既に敷地内を出ていたという。

 18日夜以降、裁判所敷地への建造物侵入容疑や警察への暴行などで少なくとも85人が警察に拘束された。警察は19日午前3時半ごろ追加の人員を配置して態勢を立て直し、支持者らを取り押さえ、同5時までには全ての支持者を建物の外部に連れ出した。

 19日朝、裁判所前の壁には、「左翼判事のカルテル(談合)を暴き出せ」と書かれた張り紙が張られていた。裁判所の入り口付近には「謹んでソウル地方裁判所の冥福をお祈りします」と書かれた「嫌がらせ」とみられる弔花の花輪が並べられていた。

 裁判所の近くに住む高校2年の男子生徒(16)は「決して暴力に訴えるべきではない。韓国国民の一人として、本当に恥ずかしい」。男性タクシー運転手の趙さん(47)は「尹大統領は支持者たちに向けてフェイスブックで感謝のメッセージを伝えるなど、支持者を結集しようとしていた。大統領にも責任の一端はある」と憤った。

 裁判官らに対する脅迫も相次いでいる。尹氏逮捕の適否を判断する16日の審査で「逮捕は不当だ」とする尹氏側の訴えを棄却したソウル中央地方裁判所の判事に対し、ネットで「出退勤時に斬首する」との書き込みがあった。韓国メディアによると、既に警察は容疑者を検挙した。

 車判事に対しても殺害予告があり、警護措置をとる方針。警察庁長官代行の李鎬永(イホヨン)次長は19日、「法治主義に対する重大な挑戦と見なし、不法で暴力的なデモについては厳正に対処していく」と述べた。【ソウル日下部元美、福岡静哉】

毎日新聞

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