42日間のガザ停戦始まる 発効遅延で19人死亡 人質の一部解放へ

2025/01/19 20:32 

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 パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエル軍の戦闘を巡り、19日午前11時15分(日本時間午後6時15分)に42日間(6週間)の停戦が発効した。仲介国カタールが発表した。ハマス側が解放する人質のリストの受け渡しがもめて、発効は予定より約3時間遅れた。双方が停戦を順守し、2023年10月から続く戦闘に終止符を打てるのかが焦点となる。

 ガザで戦闘が止まるのは、23年11月24日~12月1日に一時休戦して以来、約1年ぶり。ハマスは今回、人質約100人のうち33人を引き渡す約束だ。19日にはまず3人を解放するとし、対象者の氏名と年齢を公表した。24~31歳で、いずれも女性。人質の移送は赤十字国際委員会(ICRC)が担うとみられる。ロイター通信によると、次いで4人が7日以内に解放される予定という。

 イスラエル側は、停戦発効前の19日午前中は「ハマスが人質のリストを渡すまでは停戦を開始しない」との方針を示し、ガザでの軍事作戦を継続した。中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」によると、停戦発効が遅れた約3時間で、ガザではイスラエル軍の攻撃で少なくとも19人が死亡、36人が負傷した。報道によると、停戦合意の発表以降の死者は140人を超えるとみられる。一方、ガザの避難住民たちは停戦発効に先んじて各地の自宅への帰還を始めた。

 ガザの保健当局によると、ガザの死者は累計で4万7000人近くに上り、11万人以上が負傷した。人口約230万人のうち約9割が避難生活を送っており、人道状況は危機的だ。停戦期間中は1日あたりトラック600台分の人道支援物資が搬入される見通しで、期待が高まっている。

 15日に発表された今回の停戦合意は3段階に分かれる。第1段階の42日間の停戦期間中、19日以降は約1週間ごとに人質の解放を進め、ハマスは計33人を引き渡す。イスラエル側は拘束中のパレスチナ人を釈放する。仲介国エジプトによると、釈放の規模は計約1900人に上る予定という。

 恒久的停戦を含む第2段階の詳細を詰める交渉は、停戦発効から16日目までに始まる見込みだが、激しい駆け引きが予想される。

 イスラエルのネタニヤフ首相は18日夜、停戦合意後初めて演説し、「人質全員が解放されることを祈り続けてきた」と停戦を歓迎する一方、「戦争の目的」を果たせなければ「強大な力によって達成する」と強調。必要に応じて米国の支援で戦闘を再開する権利を維持していると主張した。また、ハマスによる武器の密輸などを防ぐため、ガザとエジプトの境界沿いやイスラエルとの緩衝地帯で部隊を増強する方針も明らかにした。

 一方、ハマスと連帯するイエメンの親イラン武装組織フーシ派は18日、イスラエル領内への弾道ミサイル発射を発表した。イスラエル軍は迎撃に成功したとしている。また、イスラエルの商都テルアビブの路上では18日、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区の男性(19)が通行人を次々とナイフで刺し、数人が負傷。男性は治安部隊に射殺された。

 ガザを巡る戦闘は23年10月7日、ハマスによるイスラエル南部への越境攻撃から始まった。ハマスは民間人ら約1200人を殺害し、人質約250人を拉致。イスラエル軍は報復としてガザに激しい空爆を加え、地上侵攻にも踏み切った。ハマスが現在も拘束中とされる人質約100人のうち30人強は既に死亡したとみられている。【金子淳(カイロ)、松岡大地(エルサレム)、松本紫帆】

毎日新聞

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