寺地、心折れかけても鮮やか逆転 ユーリ阿久井との勝負分けたのは
◇ボクシングWBC・WBAフライ級王座統一戦(13日、東京・両国国技館)
◇○寺地拳四朗(BMB)―ユーリ阿久井政悟(倉敷守安)●
鮮やかな逆転だった。
最終十二回、劣勢挽回の窮余の策と思えた寺地拳四朗の左右のラッシュが、ユーリ阿久井政悟の顔面をとらえる。ダウンこそはしないものの、相当のダメージがあったと見てか、レフェリーはたまらず試合を止めた。
寺地は試合後、正直に告白する。
「ユーリ選手がめちゃくちゃ強くて、心が折れそうになった」
ただ、こうも切り出した。
「僕の集中力が最大限発揮された」
互いのベルトを守るための誇りを示すように、序盤から接近戦。相手を跳ね上げるような鋭い右を軸に攻勢をかけたユーリ阿久井が終始、優位に進めているかに思えた。
十一回を終えて、ジャッジ2人はユーリ阿久井を支持。難局を打開したのが、最終回に見舞った右ストレートだった。「(どちらが)ポイントを取っているか分からなくて。後悔なく、勝ちに行こうと」。この一撃を口火に一気に畳み掛けた。
理想の戦いを模索しながら、ベルトを守り続ける。それが、近年の寺地だ。
そもそもフットワークを生かし、出入りのあるボクシングが持ち味の選手だったが、2021年9月に世界ボクシング評議会(WBC)ライトフライ級王座を失ったのを機に打ち合いもいとわないスタイルに転換。今回は中盤で足を使った戦いでペースを取り戻し、最後は再び打ち合いに応じて難敵を破った。
苦みも交じった勝利に寺地は「ボクシングって本当に難しいな」。試合後には3階級制覇への挑戦を示唆したが、33歳にしてまた競技の奥深さを学んだ経験は今後に生きるだろう。【岩壁峻】
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