35歳・高安「9度目の正直」も… またも優勝逃す 春場所千秋楽
◇大相撲春場所千秋楽(23日、エディオンアリーナ大阪)
◇優勝決定戦 ○大の里 送り出し 高安●
「9度目の正直」もならなかった。
エディオンアリーナ大阪で行われた大相撲春場所千秋楽の23日、東前頭4枚目の高安(本名・高安晃、茨城県出身)は優勝決定戦で大関・大の里に敗れた。この大阪で初土俵を踏んでからちょうど20年。大関経験者の35歳が「やり残したこと」と語っていた初優勝は、今回も遠かった。
千秋楽の朝、稽古(けいこ)を終えた高安は達観したように、こう語っていた。
「ピリピリしてもしょうがない。ダメだったら、また来場所頑張ればいいんで」
千秋楽の本割は、阿炎を上手出し投げで破って3敗は守った。だが、優勝決定戦は10日目に勝っていた大の里に送り出された。ただ、高安は表情を変えることなく大の里に一礼し、静かに敗北を受け入れた。
十両だけでなく、幕内や三役の昇進は全て平成生まれの力士で一番乗りだった。24歳で迎えた2014年7月の名古屋場所では千秋楽まで優勝争いに絡むなど、20代前半から賜杯は近いところにあった。
しかし、以降は場所終盤で黒星を重ね、優勝が遠のく展開が相次いだ。
特に大阪で開かれる春場所の記憶は、苦い。
大関昇進前の17年は初日から10連勝しながら、11日目から3連敗して失速した。極めつきは、22年だ。ケガの影響で既に大関から転落し、再浮上を期していたこの年は13日目終了時点で1差を付けてトップに立った。だが、14日目、千秋楽の本割、優勝決定戦と3連敗し、新関脇の若隆景に賜杯をさらわれた。
これまで千秋楽まで優勝を争うこと、過去8回。現役時代に高安の兄弟子だった西岩親方(元関脇・若の里)は「力はあるのに、運に見放されることもあった」と歯がゆかったという。
年齢と向き合い、無理はしなくなった。それと同時に、気持ちも穏やかになった。
大関時代は敗れれば、取組後の支度部屋でだんまり。優勝争いに加われば終盤戦に冷静さを欠く。だが、3敗目を喫した前日の取組後も「切り替えて、明日」と自らに言い聞かせてきた。
大関から転落した要因にもなった腰の痛みが尾を引くなどして昨年は年6場所中3場所で休場。今年は「(本場所)皆勤」を掲げ、徹底的に治療して本場所に臨んでいる。高安は「メリハリを付け、場所前は基礎運動中心の調整に変えた」。体調が万全なら実力に衰えはないことを今場所、終盤までは証明してきた。
「やっぱり楽しまないとダメですね。こんなこと(優勝争い)はいつも経験できるわけじゃない」
そう語っていたが、夢はかなわなかった。【荻野公一、岩壁峻】
◇高安が千秋楽で優勝の可能性があった場所
場所 地位 成績
2014名 前11 11-4
2015夏 前8 10-5
2018九 大関 12-3
2021春 小結 10-5
2022春 前7○12-3
2022秋 前4 11-4
2022九 前1◎12-3
2023秋 前7 10―5
2025春 前4○12―3
※名は名古屋、九は九州。前は前頭。○は優勝決定戦、◎は優勝決定ともえ戦に進出
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