<football life>トランプ氏の米国第一とサッカーW杯は矛と盾 識者「関与に警戒…

2025/03/25 08:00 

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 サッカー日本代表が2026年ワールドカップ(W杯)北中米大会出場を、日本として「過去最速」で決めた。同大会は米国、カナダ、メキシコによる史上初の3カ国共催。1月に就任したドナルド・トランプ米大統領は米国第一主義を掲げる一方で、スポーツ界は多様性や公平性が推進され、両者は「矛盾」を抱えてW杯を迎える。

 「目的としてのスポーツと手段としてのスポーツ。両方のバランスが重要だが、アメリカファースト、ビジネスファーストのトランプ大統領がW杯に関与することには警戒が必要」

 米国史や人種とスポーツの関係について詳しい早稲田大の川島浩平教授は、トランプ政権下で開催されるW杯のリスクをこう分析する。

 国際サッカー連盟(FIFA)をはじめ、近年のスポーツ界はDEI(多様性・公平性・包摂性)を尊重する取り組みを促進してきた。

 一方のトランプ大統領のスローガンは「MAGA(マガ=米国を再び偉大に)」という米国第一主義、中心主義的な考え方を持つ。例えばFIFAの人権の尊重や、いかなる差別も禁じる基本的な立場と、トランプ大統領が進める移民政策などは正反対の方向性にある。

 また大きな課題となり得るのがトランスジェンダーの話題だ。トランプ大統領は就任直後、トランスジェンダー選手の女子競技参加を禁止する大統領令に署名した。国際オリンピック委員会(IOC)に対しても、28年ロサンゼルス・オリンピックで同様の措置を取るよう求める意向だ。

 川島教授は「それぞれの立場やアイデンティティーを大切にしようとスポーツ界が積み上げてきたものに対して、トランプ大統領の米国ナンバーワン的な考え方はまったく矛盾する」という。

 また共催する米国、カナダ、メキシコの3カ国の「対立」も根深い。トランプ大統領はメキシコ、カナダに高関税政策を振りかざし、カナダについては「米国の51番目の州」と発言。川島教授は「MAGA主義は、W杯共催のパートナーである相手国も否定する方向になる。そうした矛盾を抱えた上で、W杯を開催しなければならない」と語る。

 トランプ大統領は3月上旬、W杯の円滑な開催に向けてホワイトハウスへのタスクフォースの設置を発表した。川島教授は「彼はビジネスマンでもあり、主催国としての責任は全うするというのがベースになる」と推測する。

 理念の対立が選手や観衆にどのような直接的影響を与えるのかは「現時点では読み切れない」と指摘した上で、「大会の開催に関わる経済や外交の問題はそこ(理念の対立)から派生して起きる可能性があると見ていくべきだ」と、今後の事態も注視する必要性を説いた。【角田直哉】

毎日新聞

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