「データが全て」 センバツに挑んだ神戸国際大付コーチの哲学
第98回選抜高校野球大会で22日、九州国際大付(福岡)と戦った神戸国際大付(兵庫)を陰から支えてきたのは井上雄介コーチ(46)だ。公立中学の軟式野球部監督から転身した井上コーチによる徹底的なデータ分析がセンバツ出場の鍵を握った。2024年から同校に勤め、「データにしか興味がない」と言い切る。
公立中時代は大声で指導する「熱血派」。だが10年秋から11年の春、夏の兵庫県内の地区大会で当時監督を務めていた中学が3季連続でコールド負けした。「3年生最後の夏なのに」。初心に戻って新しい指導法を探した。
編み出したのはボールカウントや走者の位置など状況に合わせたプレーを繰り返し練習することだった。そのパターンは288通りにも及ぶ。打者や走者が1試合の合計で何塁進んだかを示す「進塁数」などを考案し、選手一人一人に強みと弱みを分析した「野球の通知表」を配った。
11年秋の地区大会で優勝し、12年には全国中学校軟式野球大会で3位に。13、14年も地区大会で優勝した。
24年に教え子を何人も送り出している神戸国際大付へ。青木尚龍(よしろう)監督(61)が作る伝統の「打の国際」のチームカラーを踏まえ、打撃を重視した評価基準に作り替えた。一部を選手たちも見ることができるようにした。
監督のチーム構想を把握するため、試合後には「この場面では何を考えていたんですか」と積極的なコミュニケーションも欠かさない。
体作りにもデータを活用する。筋肉量や体脂肪率、筋肉量の目安となる「除脂肪率」の数値を基に選手ごとに必要なスクワットの回数や、白ご飯の量まで算出している。
「3カ月で体の細胞は全部入れ替わる」と口癖のように選手に語り、表を作って選手に共有した。筋肉量が増えて100キロのベンチプレスを上げられる選手が何人も出てきた。
選手たちは「データを見せて理論で詰めてくるので逃れようがない」と苦笑いするが、「義務的に縛るよりも好きな物を食べた方が育つ」とカップ麺を認めるなど柔軟な側面もある。
「増量には休養も大事」と朝の点呼を30分遅らせるなど、幸地泰輝(たいが)選手(3年)は「体のことについて一緒になって向き合ってくれる」、山城颯音(そう)選手(2年)は「気遣ってくれ、睡眠時間が長くなった」と慕う。
昨秋の近畿地区大会では、無安打無得点試合(ノーヒット・ノーラン)を達成した宮田卓亜(とあ)投手(3年)に抱きつき、以前と変わらぬ「熱血」ぶりものぞかせた。
22日の試合前の練習で、ノッカーとして甲子園の舞台に立った。練習後、選手たちとこう約束した。「(勝利して)次の試合もがんばれよ、と言ってもらえる試合をしてこい」
試合中はスタンドの生徒たちに、応援歌に合わせた動きを指示。好プレーにはメガホンをたたいて喜び、一時勝ち越した八回にはガッツポーズをするなどスタンドでも熱血なところを見せた。
チームは延長十一回タイブレークの末に敗れたが、「甲子園に連れてきてくれて感謝している。でも約束は夏にお預けですね」と笑う。「投手陣と打たれた球は、どうすれば抑えられたのか振り返る」。チームの弱点を分析し、再び甲子園に帰ってくる決意だ。【前田優菜】
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