働く高齢者の労災防止へ 環境整備を企業の努力義務に 厚労省案

2025/01/17 18:11 

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 厚生労働省は17日、労働政策審議会(厚労省の諮問機関)の分科会に、働く高齢者の労働災害を防ぐため、職場環境整備を企業の努力義務とするなどの内容を盛り込んだ報告書案を示し、了承された。近く開会する通常国会に労働安全衛生法の改正案を提出し、成立を目指す。

 人手不足や高齢化を背景に、働く高齢者は増加している。厚労省によると、60歳以上の労働者は2023年に約1138万人で過去最多を更新。全体に占める割合も、50歳以上が41・4%、60歳以上が18・7%となっている。

 一方、労災のけがや病気で死亡したり、4日以上休んだりした労働者は、50歳以上が55・7%、60歳以上は29・3%を占める。労災の発生率は業種を問わず高齢世代で上昇、休業期間も年齢が上がるにしたがって長期化する傾向があるという。加齢による筋力やバランス能力の低下が原因と推定されている。

 努力義務とすることで、企業は職場内の段差を減らしたり、手すりを設置したりするなどハード面での改善や、筋力の低下を考慮した作業内容の見直しなどを職場の実情に応じて実施することになる。同省は改正法の成立後、具体例を示す指針を策定する。

 また、報告書では、50人以上の職場で年1回の実施が義務づけられている「ストレスチェック制度」を「規模に関わらず実施を義務とする」と明記。何らかの疾患により通院しながら働く労働者の割合は40・6%(22年)に上り、治療と仕事の両立支援のための必要な措置を講じることも企業の努力義務として盛り込んだ。【堀菜菜子】

毎日新聞

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