需要増えるビジネスジェット ANAは今永昇太投手とサポート契約
プライベートジェット(ビジネスジェット)が需要を伸ばしている。これまで日本では移動手段としてなじみが薄かったが、定期便よりも発着時間が柔軟で目的地近くの空港へも最短で移動できる便利さが好評だという。オーナー企業の社長や著名人が利用するイメージが強いが、個人富裕層や民間企業での活用も広がっている。
チャーター機を手配する「ANAビジネスジェット」は1月、米大リーグで活躍する今永昇太投手(シカゴ・カブス)とサポート契約を結んだ。チャーター便を利用し、全米各地で行われる試合への移動の負荷を和らげ、コンディショニングを支える。
野球のシーズンやオフに関わらず、今永選手やその家族、周りのスタッフが利用を希望すれば、365日24時間体制で対応するという。スポーツ選手とサポート契約を結ぶのは初めてだといい、「金額など契約内容の詳細に関してはお答えできかねます」(ANA広報)としている。
今永投手は24日に東京都内であった契約発表会で「米国のレギュラーシーズンは162試合あり、ものすごくタフな時がある。プライベートな空間で寝ることができ、(体力などの)回復につながればベスト」と期待した。理想の機内食については「具がたくさん入っているみそ汁があれば。日本を感じられるものがあれば一番良いかな」と笑顔を見せた。
◇世界市場は4・7兆円
ビジネスジェット市場は欧米が中心だ。世界の運航機数(自家用機も含む)は現状2・2万機超とされ、2039年には3万機の規模に成長すると見込まれているという。このうちチャーター機の総需要規模は約4・7兆円ともいわれ、32年まで年平均5%の成長率を予測するデータもある。
国別の保有機は、23年時点で米国が2万996機と全体の約95%を占めている。国土の広い米国では電車や定期の航空便よりも利便性が高いため、需要が旺盛だという。次いでドイツが559機、フランスが249機と続く。英国や中国、豪州も200機程度だ。
一方、日本国籍の保有機は83機にとどまる。ビジネスジェット専用施設や専用空港が欧米より少なく、狭い国土で交通インフラが充実していることも一因と考えられており、認知度も不足している。
ビジネスジェットの強みはフライト時間の短縮のほか、秘匿性が高いため機内でのミーティングなど移動時間も有効活用できること。個人富裕層のほか民間企業での活用も増えているという。国土交通省の統計によると、国内のビジネスジェットの発着回数は新型コロナウイルス禍の20、21年を除き、17年から右肩上がりで、23年は2万1675回。急増する訪日外国人客(インバウンド)の地方誘客の手段としても効果的だが、取り込み不足も課題となっている。
◇日米往復6000万円も
ANAビジネスジェットによると、利用料金は東京と下地島(沖縄)を小型チャーター機(4~5席)で往復する場合、1回あたり700万円以上。また、東京と米ニューヨークを大型機(13席程度)で往復する場合は、1回当たり6000万円以上かかる。
ANAビジネスジェットは18年7月に設立。国内外の運行会社約200社と業務提携し、運行機材を持たず、要望に合わせてチャーター機の手配や渡航計画の提案を行う。コロナ禍でも順調に成長し、23年度は過去最高益を達成した。
世継崇社長は「みなに等しく、限りがある時間をもっと有意義に、有効に使っていただくためお役に立ちたい。グループのネットワークを連携し、日本はもとよりアジア、世界の中で多くのお客さまにご利用いただきたい」と話した。【佐久間一輝】
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