「オーダーメード酒」で注目、新しい味生み出す小林醸造 栃木・鹿沼

2025/02/05 12:15 

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 栃木県鹿沼市で37年ぶりに清酒蔵を復活させた小林醸造(同市上粕尾、小林一三社長)が、注文者に応じた小ロットでの「オーダーメード酒」製造を行い、注目を集めている。醸造所は山間部の過疎地にある旧上粕尾小学校の校舎を活用。東武鉄道や県立鹿沼南高とのコラボにより、それぞれ水や酒米など原料にこだわった日本酒を生み出している。さらに、酒造り体験を提供する酒蔵ツーリズムも展開し観光活性化にも取り組んでいる。

 同社は酒類卸・小売業の小林酒店(同市千渡)が設立。大田原市の老舗酒造、「池島酒造」から事業を継承して清酒製造免許を取得した。小林社長は東京農業大学醸造学科出身の醸造家で、酒造りの文化を守りながら鹿沼市のシンボルとなるような地酒を作ることや、山間地に雇用を創出することを目指し、起業を決意した。

 すでに東武鉄道と協力し、スペーシアX運行1周年の記念酒「車窓」を製造。地元産の米と古峯神社の御神水を使用した。スペーシア車内で限定1000本が販売され、わずか2カ月で完売するなど好評だった。

 また、昨年は、国指定文化財でユネスコ無形文化遺産にも登録されている「鹿沼秋まつり」の公式記念酒を手がけたほか、民間グループからの注文にも応じ、個性的な日本酒を醸造した。

 さらに1月は、日光の社寺世界遺産登録25周年の記念酒の醸造に着手した。日光二荒山神社の御神水でお水取りを行い、同社社員らと洗米など仕込みを行い特徴的な酒造りを進めている。

 順調な滑り出しで多忙だが、同社は受注生産の他にも、承継した池島酒造のブランド酒も製造し続けている。また、小林酒店の先代がプライベートブランドとして販売していた「鹿沼娘」を、全て地元産の原料を用いて自社の蔵で生産している。

 「注文に応えて新しい酒を生み出すことは楽しいが、責任も大変重く感じている」と小林社長。それぞれのオーダーの背景をくみながら独自の味わいを醸すことに苦心する中で、自社ブランド「鹿沼娘」の認知度向上にも力を注ぐ。

 国際コンテストでの受賞経験もあるが、目標は世界一の酒だ。1月からは、オランダやイギリス、フランス向けに輸出も開始した。リノベーションした旧校舎は直売所を設け、その場で量り売りし生酒を販売するなど、醸造所ならではの取り組みを展開。小林社長は「地域に根ざした酒蔵として、鹿沼の魅力を伝えていきたい」と意気込んでいる。【松沢真美】

毎日新聞

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