トランプ氏に関税やめろは「無理」 現実的な対策を 訪米した新浪氏

2025/02/22 15:35 

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 米首都ワシントンを訪れ政財界要人と会談した経済同友会の新浪剛史代表幹事(サントリーホールディングス社長)は21日、トランプ政権の関税引き上げについて「止めろと言っても無理。適用除外も『ない』との見立てが多かった」と述べた。関税引き上げが米国では既に前提条件となっており、日本企業も覚悟を決めて対応策を講じるべきだとの考えを示した。

 新浪氏は19~24日の日程で訪米。ラトニック商務長官などトランプ政権の高官や共和党議員、米大手企業のトップらと面談し、経済政策を中心に意見交換した。21日にワシントンで記者団の取材に応じた。

 新浪氏は「議論をしていると『もうこれは所与だ。トランプ氏に関税をやめろというのは無理だ』とこちらの人は言っている」と述べ、既に米政財界では関税引き上げは止められないとの認識が広がっていると説明した。

 米企業は「報復関税で被害を受けたら、その分だけ法人税を下げるなど『別の形で採算を良くしてくれ』と陳情している」と述べ、関税ストップではなく関税による損失の公的埋め合わせを「現実的」な問題の解決方法とみなしていると解説した。

 大幅な関税引き上げは物価上昇(インフレ)を引き起こす恐れが高い。だが、新浪氏によると、トランプ氏の最重要課題は2026年の中間選挙での勝利であり、「『当面はインフレでもよい。中間選挙の時に抑えればよい』と考えているイメージだった」との見方を示した。

 日本政府は鉄鋼・アルミニウムや自動車を対象にした関税について、日本を対象から外すようトランプ政権と交渉する予定にしている。だが、新浪氏によると、多くの面談相手は「例外はない」と述べており、適用除外は難しいとの見方を示した。

 米国からの輸出を妨害しているとされる「非関税障壁」などの解消でトランプ氏は矛を収めるとの見方があることを示しつつも、いったんは関税が上がる可能性が高いと指摘。関税が上がっても勝負できるよう利益率の高い商品に事業を特化したり、企業同士の合従連衡で競争力を高めたりするなど抜本的なトランプ関税対策をとることが必要と述べた。

 一方、日本製鉄によるUSスチール買収計画については、議員を含む多くの人が「賛成」と述べる一方、トランプ政府高官は「明確に反対だった」と明かした。1次政権ではトランプ氏の政策に反対する側近がいたが、2次政権はトランプ氏に忠誠を誓う人物で固められているのが大きな違いと説明。「皆がトランプ氏の言うとおりに動く」と述べ、歯止め役のいない政権運営の危うさにも言及した。【ワシントン大久保渉】

毎日新聞

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