稼働30年の伊方原発3号機 四国電力、信頼回復への道のり半ば
2024年12月15日、四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)は運転開始から30年を迎えた。原子炉等規制法では30年超の運転をする場合、事業者に10年ごとの管理方針策定を求めている。四電は3号機について同10月に原子力規制委員会から認可を受け、次の10年へ踏み出した。一方、20年にトラブルが相次ぐなどこれまで住民らの信頼を大きく損ねる事態が起きている。四電関係者は「安全施策はこれで終わりと思ったら本当の『終わり』だ」と不断の努力を誓う。
◇トラブル相次ぎ
3号機を巡っては定期検査中だった20年1月、原子炉内で核分裂を抑える制御棒1体を誤って引き抜いたり、電源を一時喪失し燃料プールの冷却が一時停止したりするなど4件のトラブルが相次いだ。
四電は定期検査を中断し、原因究明と再発防止策の策定だけでなく、トラブルが生じた背景も分析。作業計画の妥当性の確認や改善提案の活用が不十分だった点があるとして、1000件を超える全作業要領書をすべて点検して見直した。また、点検や補修の作業担当部門が作った計画の妥当性について独立した立場からチェックする「プロセス管理課」を同年9月に新設した。
◇「えひめ方式」
伊方原発に対しては愛媛県も目を光らせている。1999年から、原発付近での地震や火災だけでなく何らかの異常があった場合は事態の大小に関わらず全て四電に通報・報告させ、県が報道機関への説明やホームページ(HP)などで公表する仕組み「えひめ方式」を実施。2001年の改定を経て、通報を受けた県が事案の軽重や公表方法を判断した上で、記者説明やHPで発表している。電力事業社ではなく、県が主体の形式は全国でも珍しいという。
県原子力安全対策課によると、1999年以前も異常時の通報は行われていた。しかし、96年に3号機の機器損傷事案で通報遅れがあったことなどから「えひめ方式」の導入につながったという。県は四電に対し、信頼関係を構築する上で「報告遅れは信頼に亀裂が入り、隠ぺいは信頼を粉々にする」という認識を現場に徹底することを求めている。四電も「透明性の高い情報公開をする必要があるという思いは同じだ」とする。
◇60年超運転へ
3号機の30年超の運転は一度は認められた。ただ、60年超運転を可能にした6月施行の「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」に基づき、原子力規制委から改めて「長期施設管理計画」について認可を受ける必要がある。同計画は、設備の劣化状況の評価や安全確保に要する部品の管理方針を最長10年ごとに定めるもの。四電は既に計画を策定し、認可申請中だ。
四電の宮本喜弘社長は24年11月の定例会見で運転開始から30年の節目に際し、愛媛県、伊方町、地域住民への謝意を示した上で「これからも安全・安定運転の実績を着実に積み重ね、さらなる安全性・信頼性の向上に、不断の努力を重ねていく」と決意を述べた。
一時、大きく損ねた信頼回復への道のりは半ばだ。四電には行政だけでなく、地元住民らの厳しい目が向けられている。【山中宏之】
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