「高すぎる」福岡でも住宅買い控え 郊外では用地取得競争も
国土交通省が発表した公示地価は、福岡県の住宅地の上昇率が平均4・9%と、昨年から上げ幅が0・3ポイント縮小した。昨年2位だった都道府県別の順位は東京都に抜かれて3位に。「億ション」など富裕層向けマンションの建設が相次ぐ福岡市などが地価上昇を引っ張っているが、近年は「高すぎる」と住宅を買い控えるファミリー層も目立つ。
「これだけ高くなると需要が鈍る」。福岡市西部で新築マンションを売り出した不動産会社の社長がため息をついた。1カ月前の販売初日に募集の10倍の客が殺到。即日完売と思いきや、売れ残りが生じたという。3LDKで6000万円を超える価格が受け入れられず、ローンが組めない客もいた。
福岡市は九州各地などからの流入で年間1万人ペースで人口が増加。近年は公示地価でも住宅地は平均で年1割近い上昇が続き、過去数年で地価が5割増しになった地区も珍しくない。建築資材や人件費の高騰も加わり、住宅の販売価格も年々上昇してきた。
社長は「福岡の標準的な子育て世帯に手ごろな価格のマンションを売りたいが、5000万円を超えると売りにくい。福岡市内や近隣自治体の駅近くだと6000万円を超えてしまう」とこぼす。福岡市内では数年前から建て売り住宅の狭小化が目立ち、その小型の住宅の価格も年々上がる。「家の購入を諦めた」と賃貸に住み続ける家庭も多い。
手ごろな住宅を開発しようと、郊外の鉄道沿線では宅地やマンション用地の取得競争も起きており、福岡県古賀市など住宅地の上昇率が10%前後の自治体もある。ただ、同じ福岡県でも小郡市や須恵町などでは上昇率が半減する動きも見られ、地元の不動産鑑定士は「郊外で魅力だった土地の割安感が薄れてきたため」と解説する。福岡市郊外ではマンションの売れ残りも増えており、「消費者は価格にシビアになり、マンションを厳選するようになった」という。
一方で福岡市中心部では富裕層向けのマンション開発が相次ぐ。地価や建設費が高騰する中、価格を気にしない富裕層向けに注力する開発業者も多く、ブランド力のある大手不動産会社が、福岡市内でも1億円を超えるマンションを手がけるようになった。福岡市中心部では「相場の数倍で土地が落札される例もある。億ションとして販売しないと採算が合わないレベルで、ついていけない」(地場マンション販売会社)との声も聞かれる。
ライフルホームズ総研の中山登志朗副所長は「人口増加を背景に福岡市周辺の地価の上昇はしばらく続くだろう。住宅価格の上昇で国内外から投機的な資金が流入し、実需以上の値上がりが起きている。関東や関西のように福岡でもファミリー層はより郊外に家を求めるようになり、北九州市なども候補になるだろう」と話す。【久野洋、植田憲尚】
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