「トランプ関税」で中小企業にも逆風 コスト増と需要減のジレンマ
トランプ米政権による関税引き上げが、中小企業の米国向けビジネスにも逆風となっている。近年の円安傾向の利点を生かし、日本ならではの製品を輸出する企業が増えていたが、ターゲットとする市場や価格の見直しを迫られている。
◇日本の2倍の価格でも売れた
「消費者が手を出しにくくなるような値上げは避けたい」。4月中旬、文具の企画・販売を手がけるスガイワールド(東京都世田谷区)で海外業者との渉外を担う須貝美由紀さんは、取材にこう話した。
一部を除き、あらゆる製品を対象に一律10%を課したうえで、貿易赤字が大きい相手国・地域に高い税率を上乗せするトランプ政権の「相互関税」。それによるコスト増は痛手だが、そのまま値上げすれば需要減につながりかねない。そんなジレンマがある。
スガイワールドは、2017年から動物をモチーフにしたクリップなどの輸出を始めた。環境に配慮した紙素材を使い、国内の町工場で丁寧に生産する質の良さが売りだ。海外売上高は全体の6割で、うち7割を米国向けが占めている。
日本の文具はデザインのほか質や性能も評価され、米国で人気が高い。これまでクリップの輸出に関税は課されていなかったが、輸送料などのコストを含め、日本で数百円のクリップが米国では2倍ほどの価格になった。それでも円安の恩恵もあり、売り上げや利益は伸びていたという。
ところが、今回の相互関税は紙製品のクリップも対象だ。外国為替市場では4月中旬からドルが売られ、一時1ドル=140円を割るまで円高が進んだことも輸出には逆風となる。
現時点で大幅な値上げは想定していないという須貝さん。代わりに、取引のあるフランスやスイス、イタリアなど「欧州への輸出を強化したい」と、米国以外への販路拡大を模索している。国内では訪日客向けに観光地や美術館などの施設に置く商品の種類を増やすことも検討し、難局を乗り切ろうと必死だ。
◇強みあれば憂いなし?
一方、海外から日本製品を購入できるサイト「Buyee(バイイー)」の運営会社を傘下に置き、日本企業のインターネット通販事業を支援しているBEENOS(ビーノス)では、現時点でトランプ関税の影響は特段ないという。
バイイーでは、日本のアニメ・ゲーム関連グッズやファッション関連の商品を北米の若者が多く買い求めている。担当者は「関税の今後の影響は未知数」としながらも、「日常の必需品というよりレアな商品、わざわざ買いたい日本限定の商品への需要がある」と底堅さを感じている様子だ。他に代えがたい独自の強みがある商品なら、ただちに関税の影響を受けないケースもあるとみられる。
◇かき消された楽観論
今でこそトランプ関税の嵐が吹き荒れているが、日本の対米輸出額は24年まで4年連続で増加しており、日本企業にとって米国は魅力的な輸出先だった。
日本貿易振興機構(JETRO、ジェトロ)が24年11~12月、日本企業に実施した調査(中小企業も含めて回答3162社)では、今後最も重視する輸出先は米国がトップの25・8%。比較可能な16年以降で最も高く、景気減速が指摘される中国(14・8%)を引き離していた。
調査した時期はトランプ大統領の就任を控えた時期で、企業の多くは、資源関連プロジェクトの推進や日本食人気を踏まえた飲食料品の輸出拡大などに期待を寄せていたようだ。
ところが、トランプ氏の就任後は相互関税の発動などで先行きが一気に不透明になり、楽観論はかき消された。ジェトロが2月に設置した関税に関する相談窓口には「自社製品は対象か」「正確で迅速な情報がほしい」といった声が多く寄せられているという。
ジェトロの担当者は「短期的には様子見をしている企業が多いが、中長期的には価格転嫁やターゲット市場の見直しを考える企業も増えてくるのでは」と話している。【加藤美穂子】
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