トランプ氏、EV普及策廃止の大統領令署名 マスク氏影響は限定的か
トランプ米大統領は20日、バイデン前政権が後押しした電気自動車(EV)普及策の廃止を検討する大統領令に署名した。バイデン氏が2021年に署名した「30年までに新車販売の半分をEVにする」との大統領令も撤回。気候変動対策の強化を目的にした米国のEV推進の流れに急ブレーキがかかることになった。
トランプ氏は就任演説で「グリーン・ニューディールを終わらせ、EV義務付けを撤回する」と述べた。
その後、署名した大統領令には「他の技術よりEVを優遇する不当な補助金や政府主導の市場のゆがみの撤廃を検討する」と明記。充電ステーションへの国の補助金停止も盛り込んだ。
バイデン前政権は22年8月、最大7500ドル(約117万円)のEV購入補助など気候変動対策に巨額の予算を計上した法律を成立させた。運転中の二酸化炭素(CO2)排出ゼロのEVの普及を後押しする狙いがあった。
だが、トランプ氏は大統領選でバイデン氏のEV推進策を批判。自動車産業の集積する中西部ミシガン州などでEVを毛嫌いする自動車労働者の支持を集め、勝利につなげた。
大統領選の勝利に貢献したイーロン・マスク氏はEV大手テスラを率いており、多くのテスラ車が国の購入補助の対象となっていた。EVに特化するテスラは、ガソリン車と併売するフォード・モーターなど米大手自動車メーカーに比べて価格競争力が高く、「販売への影響は、競合他社に比べ限定的」(米証券アナリスト)との見方が出ている。
一方、トランプ氏はEV用電池の生産工場などへの補助金打ち切りには、慎重姿勢をとるとみられる。サウスカロライナ州など共和党の地盤である米南部への工場新設が相次ぎ、地元から補助金維持を求める声が出ているためだ。
バイデン前政権の下で環境保護局(EPA)は32年までに新車販売の最大56%がEVになるとの見通しを示していたが、こちらも見直される見通しだ。
ただし、自動車業界の脱炭素に向けた大きな流れに変わりはない。格安EVを生産する中国メーカーが急速に世界で販売を拡大していることもあり、日米欧などの大手自動車メーカーはペースを落としつつもEVへの投資を続ける方針だ。【ワシントン大久保渉】
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