「違法越境は侵略」 トランプ氏が移民対策指示 対応部隊増強へ

2025/01/23 17:32 

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 トランプ米大統領は22日、南部のメキシコとの国境を介した「米国への侵略」に関与した外国人の入国を停止する大統領令に署名した。不法越境を「侵略」と位置づけ、関係省庁に不法移民の国外追放に向けて必要な措置をとるよう指示した。

 トランプ氏は大統領選で公約した「米国史上最大の不法移民の国外追放」に向けて、行政上の根拠を整備した。大統領令では「侵略に対して各州を守るのは連邦政府の義務だ。不法移民は追い返し、送還し、排除する」と自身の対応を正当化した。

 トランプ氏の方針に沿って、国防総省は22日、最大1500人を南部国境に増派すると明らかにした。国境地帯では州兵や予備役部隊の計約2500人が税関・国境警備局(CBP)の活動の後方支援にあたっており、今回で6割増員となる。米メディアによると、派遣人員は今後、1万人規模に拡大する可能性がある。

 不法移民を国外に移送するため、軍用機を提供する方針も決定。米軍は「国境の壁」の建設や、国境地帯の警備も支援する。国内の法執行に米軍を使うことを禁止する法律があるため、米軍の活動はCBPなどの補完的役割に限定されるとみられる。

 米国内に約1100万人(国土安全保障省の推定)いるとされる不法移民の国外追放も始動している。共和党のブリット上院議員によると、移民・関税執行局(ICE)は21日だけで308人の不法移民を拘束。刑事施設に収監されている不法移民約300人をICEの施設に移送することも求めた。

 一方、米メディアによると、司法省は21日付の内部文書で、州や自治体が不法移民の国外追放に向けた取り締まりに協力しない場合、刑事訴追を視野に捜査するよう連邦検察に指示した。「連邦法が州法に優越する」という合衆国憲法の規定などを根拠に「州や地方は、大統領の移民政策に従う必要がある」と説明。州や自治体による「抵抗、妨害、不服従」があった場合、訴追も視野に捜査するという。

 司法省の動きは、不法移民に寛容な「サンクチュアリシティー(聖域都市)」と呼ばれる自治体を意識したものだ。

 不法移民は飲食業、製造業、農業など幅広い分野で労働の担い手になっており、聖域都市からはトランプ政権の取り締まりに反対論や戸惑いの声が上がっている。自治体側には、不法移民が犯罪被害に遭った場合、自身が国外追放されるのを恐れて通報せず、結果的に犯罪の取り締まりが難しくなるとの意見もある。司法省には強硬姿勢を示すことで、聖域都市の抵抗を抑止する狙いがあるとみられる。

 一方、民主党の州知事らは訴訟を通じて、トランプ政権の不法移民対策を無効にしようと動いている。トランプ氏は20日の大統領令で不法移民の親を持つ新生児に市民権(国籍)を認めない方針を示したが、憲法が定めた市民権の「出生地主義」に反するとの見方が強く、民主党が優勢な22州が訴訟を起こした。【ワシントン秋山信一】

毎日新聞

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