中国・蘇州の日本人母子死傷 被告に「死刑」も拭えぬ在留邦人の不安
中国・江蘇省蘇州市で昨年6月に日本人母子らが切り付けられて3人が死傷した事件で23日、50代の中国人男性被告に死刑判決が言い渡された。
初公判からわずか2週間のスピード裁判だった。国内で相次ぐ襲撃事件に危機感を抱く習近平指導部が厳しく対処し、早期の沈静化を図る意図がうかがえる。ただ、在留邦人に広がる不安の解消にはほど遠いのが実情だ。
「厳しい判決の印象だ。だからといって、中国で暮らす日本人の不安がすぐに和らぐとは思えない」。北京市内で妻子と暮らす50代の日本人男性はそう語った。
現場となった蘇州市は「東洋のベニス」とも言われる観光地だ。一大経済都市・上海とも隣接する地の利から、多くの在留邦人から「穏やかで過ごしやすい街」(大手金融幹部)として知られる。そこで起きた凶行は日本人社会に衝撃を与えた。近年、中国のネット交流サービス(SNS)では「反日」的な言論が流布しており、事件は不安に拍車をかけた。
蘇州に住む駐在員の男性によると「現場近くのマンションからは事件後、多くの日本人家族が退去した」という。最近は平穏な生活が少しずつ戻ってきた感覚があるが、私服警官の巡回が増えたといい、街の雰囲気は以前とは変わってしまったそうだ。
日本外務省の説明によると、中国政府が公表してこなかった犯行の動機について、判決文では日本に関連する言及はなかった。借金苦で自暴自棄になったためだとされている。
中国各地での一連の襲撃事件を巡っては、生活苦や孤立感を深める人による「社会への報復」との見方が出ている。景気減速による社会不安の高まりを映し出す事件とも言えそうだ。【北京・松倉佑輔、河津啓介】
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