トランプ氏、旅客機衝突の会見を政治ショー化 国まとめる資質見えず
トランプ米大統領は30日、ホワイトハウスで、首都ワシントン近郊で29日夜に起きた小型旅客機と米軍ヘリコプターとの衝突・墜落について記者会見した。冒頭では黙とうをささげ「私たちは一つの家族だ」と国を挙げて犠牲者を悼む気持ちを表明。しかし、会見が進むにつれて、あたかも民主党政権の「失政」が原因であるかのような発言を繰り返して「政治ショー」化させ、難局で国をまとめる資質の欠如を露呈した。
トランプ氏は約30分間の会見の冒頭、目を閉じて黙とうした。「(機体が墜落した)ポトマック川は極寒で、寒い夜、冷たい水だった。犠牲者を思うと、私たちは皆、悲嘆に打ちのめされる。このような時、思いやりの絆が私たちを団結させ、違いは色あせる」。静かな会見場には、神妙な口調で用意された原稿を読み上げるトランプ氏の声が響いた。
しかし、墜落の背景に話題が移ると、普段のトランプ氏の激しさが徐々に戻った。「(民主党の)オバマ政権時代に航空システムは二流だったのを(1期目に)私が一流に変えさせた。しかし、バイデン氏(前大統領)がやってきて、再び質を低下させた」。トランプ氏は連邦航空局(FAA)の航空管制官の質が低下したと一方的に主張した。
さらに、民主党政権が推進したDEI(多様性、公平性、包括性)施策について「彼らは、FAAによる安全確保の任務のためには多様性が不可欠だと言っていた。しかし、私はそうは思わない。全く逆だ」と主張。「我々は能力がある人材を求める」と述べ、自身が進める「能力主義への転換」に話題をすり替えていった。
事故原因の究明は始まったばかりで、会見時点では明確な情報は明らかになっていなかった。それでもトランプ氏は「視界は良好で、空域は見えていたはずだ。どの時点で(ヘリに)『旅客機に接近しすぎている』と言うべきだったのかということだ」と語った。記者から「管制を批判する根拠は何か」と突っ込まれると、「航空管制官を非難しているわけではない」「(DEI施策が)原因になったかもしれないというだけだ」と釈明した。
また、旅客機の飛行は「いつも通りだった」とする一方で、ヘリについては「すばやく上昇、下降、転回する能力がある。いくらでも避ける方法はあったのに、真っすぐ進んでいって、最後の最後で方向を少し変えようとしたが遅すぎた」と批判する場面もあった。当局は「旅客機もヘリも通常のルートで飛行していた」としており、トランプ氏も発言の行き過ぎを指摘されると「全てはまだ調査中だ」とかわした。
会見では同席したバンス副大統領、ヘグセス国防長官、ダフィー運輸長官もトランプ氏に促されて短時間発言した。しかし、いずれも犠牲者や遺族に哀悼の意を表する前に、まず「トランプ氏の危機対応のリーダーシップ」を称賛。独善的なトップが権力を握るトランプ政権の姿があらわになった。【ワシントン秋山信一】
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