ドイツ、移民政策厳格化の決議案可決 最大野党の方針転換が物議

2025/01/31 08:46 

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 2月下旬に前倒しの総選挙を控えるドイツの連邦議会で29日、移民・難民政策の厳格化を政府に求める決議案が賛成多数で可決された。最大野党で中道右派の「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」が提案し、排外主義的な右派「ドイツのための選択肢(AfD)」も賛同した。法的拘束力はなく、政府方針への影響はないとみられるが、AfDとの協力を否定してきたCDU・CSUの方針転換が物議を醸している。

 ドイツでは22日、南部アシャッフェンブルクの公園でアフガニスタン出身の男性が幼児らを刃物で襲い、2人が死亡する事件が発生した。これらを受けて、移民・難民政策が改めて選挙戦での争点となっている。今回、CDU・CSUが提案した決議には、国境の持続的な管理▽入国許可証を持っていない人物の入国拒否▽国外退去の対象者の拘束――などが含まれる。

 移民・難民対策の強化を公約に掲げるCDUのメルツ党首は24日、「誰が賛成するかにかかわらず(決議案を)出す」と述べ、AfDとの協力も辞さない姿勢を示していた。ドイツでは、ナチス政権を生んだ反省から排外主義勢力への警戒感が強い。主要政党はAfDとの連立や政策協力を否定し、CDU・CSUも例外ではなかった。与党の中道左派・社会民主党などはメルツ氏の発言を強く批判し、採決でも反対した。

 そもそも、欧州連合(EU)加盟国のドイツが国境管理を恒常化することは、EU域内の自由な移動を可能にする「シェンゲン協定」に反する。このため、今回の決議は実現可能性が低いとも指摘されている。

 最近、CDU・CSUは世論調査での支持率が政党間で最も高く、現時点では、2月23日の前倒し総選挙後に第1党となる公算が大きい。メルツ氏は公約の実現に向けた強い姿勢をアピールした形だが、AfDに拒否感を持つ支持者からは不評を買うおそれもある。【ベルリン五十嵐朋子】

毎日新聞

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